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生命に内在するタンパク質架橋化反応の生理機能を探る

  • 創薬科学研究科
  • 基盤創薬学専攻
  • 細胞生化学

教授 人見 清隆[ひとみ きよたか]

http://www.ps.nagoya-u.ac.jp/lab_pages/biochemistry/newpage2.html

シーズの概要

生体内には、タンパク質どうしが不可逆に接着(架橋)して、その形質を変化させる現象が、特定の酵素ファミリーにより行われている。例えば、血液凝固、皮膚の硬度化、死細胞の固化など、トランスグルタミナーゼと呼ばれる酵素が、厳密な制御のもとで働く。逆にこの制御が破綻すれば、血友病、線維症(フィブローシス)、神経変性疾患等に至る。
私はこの酵素が作用する(架橋される)基質タンパク質の特徴を、架橋部位のペプチド配列の傾向から明らかにしてきた。同時にペプチドライブラリから天然基質の反応性を上回る基質として働くペプチドを同定した。これらを活用して、①組織での高感度な架橋形成の検出方法を確立、②非基質の分子に基質ペプチド配列を導入して、接着酵素で新規分子を創製する、ことに従事してきた。
このペプチド配列は、診断やさらには阻害剤としての可能性もあり、多様な対象で試みることにより、さらなる展開を期待している。

この研究の新規性・独創性

上に述べたように、タンパク質架橋接着反応が各種疾患の原因となっていることが明らかになるにつれて、世界的なレベルでこの酵素の阻害剤の探索が行われている。特に欧米に多い「セーリアック病」は小麦グルテンへの本酵素による異常な修飾が原因となることが明らかで(Nat Med 2012)、競争的に探索されている。しかしながら、この架橋反応を担う酵素群は、ヒトでは8種類存在するため、阻害剤を適用するにあたっては、他の生理作用に影響されない特異性の高い阻害活性をもたらさねばならない。
我々のペプチドはアイソザイムを区別する基質特異性に優れており、ドイツZedira社は我々の配列を基に新たな阻害剤の合成を行っている。また基質ペプチドにより酵素との相互作用を構造学的に明らかにしていく予定で、ランダムでなくより構造に基づいた確かな阻害剤の可能性を与えるものである。

産学連携を目指した応用研究

線維症・炎症の診断と治療に向けた創薬シーズ:腎臓、肝臓、肺における線維化に本酵素反応の関与が示唆されている。言い換えれば、①本酵素の活性化や活性状態をモニターすることで各疾患の診断が可能であり、②本酵素の活性を抑制することで線維症の進行を食い止める可能性が考えられ、現在はマウスでのモデル系を作製し検討している。
皮膚表皮疾患の診断:高感度に皮膚表皮の活性変動を捉えるシステムを開発している。これは基質ペプチドと皮膚切片を混合するだけの簡便で短時間に完了する方法である。すでに皮膚疾患を扱う医学系研究者と共同で、試験的に関連疾患の異常を検知することが可能であることを示した。

一言アピール

タンパク質間に強固な接着を形成させる、タンパク質架橋化酵素「トランスグルタミナーゼ」は、血液凝固や皮膚表皮形成に必須で、線維症等の疾患にも関わる。この酵素に対する「接着されやすいペプチド基質配列」を有効活用して、阻害剤開発によるや診断のための高感度活性検出へ展開したい。

キーワード

タンパク質架橋、線維症、皮膚、血液凝固

保有技術

  • 簡便で高感度なトランスグルタミナーゼ活性の可視化及び測定系
  • 遺伝子組換えタンパク質作製(大腸菌、昆虫細胞、動物細胞)
  • マウスおよびラットでのモノクローナル抗体作製
  • 肝臓および腎臓の線維症モデルマウスの作製

主な機器

  • 動物・昆虫細胞培養機器、タンパク質精製関連装置、卓上型蛍光顕微鏡

主な特許

  • トランスグルタミナーゼ基質反応性を有するペプチド及びその利用(特許第5082094号)

主な論文

  • タンパク質架橋化酵素の高反応性基質の探索と活用 バイオサイエンスとバイオインダストリー 11月号 6号 (2012) 442-447
  • Variations in both TG1 and TG2 isozyme-specific in situ activities and protein expressions during mouse embryonic development. J. Histochem. Cytochem. 61, 793-801 (2013)
  • Identification of a highly reactive peptide for TG6
  • Transglutaminase 2 and Factor XIII catalyze distinct substrates in differentiating osteoblastic cell line: utility of highly reactive substrate peptides: utility of highly reactive substrate peptides. Amino Acids 44, 209-214 (2013)
  • Screening for the preferred substrate sequence of transglutaminase using a phage-displayed peptide library: Identification of peptide substrates for TGase 2 and Factor XIIIa. J. Biol. Chem. 281, 17699-17706. (2006)