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LMD-MS法:新しい質量分析イメージング技術

  • 環境医学研究所
  • 生体適応・防御研究部門
  • 脳機能分野

教授 澤田 誠[さわだ まこと]

http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/brain/index.html

シーズの概要

質量分析イメージングを実施するには「質量顕微鏡」と呼ばれる装置を用いるが、高額でしかも分析できる分子の大きさが2,000ダルトン程度までなど制約も多く、タンパク質や核酸などの生体高分子の分析には適さない。当技術はこの問題点を解決できるもので、汎用品の質量分析計と併用する事で安価で高分解能の質量分析イメージングを実現できる「MSイメージングアクセレレーター」として開発している。この技術では組織切片からレーザーを用いて直径5μm程度の小片をホットメルトフィルムに固定した形で切り出し、その「位置座標」を保ったまま質量分析サンプルプレート上に一定の間隔で置き直して質量分析を行うが、新規に開発した「座標再現機能」によりすべての切り出し小片の位置情報が管理できるため質量イメージの3D表示ができ、さらに、ホットメルトフィルムが持つ特定物質のイオン化抑制作用により、質量顕微鏡では検出が難しかった難溶性のペプチドなど分子量15,000ダルトンまでの高分子の分析も可能となった。また、通常の質量分析イメージングはMALDI-MSを用いて解析するが、当技術により切り出した小片をマイクロディスペンサと組み合わせて可溶化することで、より精度や定量性に優れているLC-MSやGC-MSによる質量分析イメージングにも応用できる。

この研究の新規性・独創性

LC-MSを用いた質量分析イメージング装置は、これまでに例がなく、新規性が高い。また、高分子の3次元イメージングが可能になることは生命科学分野に限らず、医療、創薬、食品安全などの分野においてもその有用性は高い。さらに、この装置を発展させて生理活性ペプチドやマイクロRNA等の生体内分布のイメージングができるようになれば、ライフサイエンス研究分野での用途が大きく広がり、従来の質量分析イメージング装置に対して飛躍的に大きな優位性を持つことができる。
また、大学研究室や病院、検査センター、分析センター、製薬企業などが既に保有しているMALDI-MSやLC-MSに、当MSイメージングアクセレレータを組み合わせるだけで高性能な質量分析イメージングが可能となるので、従来の質量分析イメージング装置と比べて市場的にも優位性が高い。
さらに、ホットメルフィルムの分画効果やイオン化抑制効果により通常では検出しにくい物質が高感度に検出できるほか、目的に応じたフィルムの選択により様々な分野において幅広い物質の分析が可能となると考えられる。

産学連携を目指した応用研究

LC-/GC-MSで質量分析イメージングを実現する装置:LC-MSやGC-MSはMALDI-TOFF MSに比べて検出感度、定量性など優れているが、原理的に質量分析イメージングには適さないため、当技術によりLC-/GC-MSで質量分析イメージングを実現できる。製薬企業、病理解析、基礎生物学などニーズは大きい。
ホットメルト-質量分析による疾患バイオマーカーの検出:ホットメルトフィルムのイオン化抑制効果を利用して血液や表皮などの微量生体成分を複雑な前処理を行わずにバイオマーカーを検出する。医療、検査領域に有用。
次世代創薬に向けた単一細胞での薬物動態と薬効解析への応用:当技術により単一細胞を切り出して薬物の分布や代謝が計測できるほか、その薬物の作用により変化する生体物質を同時定量して薬効解析や毒性評価を同時に評価できる。細胞内小器官の切り出しも可能で、さらに高度な創薬標的の解析も可能。

一言アピール

当技術により単一細胞レベルの空間分解能で低分子から高分子にいたる様々な生体物質をイメージングできる。さらに疾患マーカー探索や薬物動態解析、植物組織内での残留農薬の分布解析など応用範囲が広く、医療や食の安全につながると期待できる。

キーワード

質量イメージング、ホットメルトフィルム、単一細胞解析、バイオマーカー、薬物動態解析

保有技術

  • 超高分解能ホットメルト-質量分析
  • 座標再現機能による単一細胞解析
  • LC-/GC-/MALDI-質量イメージング
  • バイオマーカー探索

主な機器

  • レーザーマイクロディセクション、染色画像自動取得装置、改良型座標再現ステージ、顕微蛍光分光カメラ、ケミカルプリンター、質量分析計(MALDI-TOF,LC-MS)、小動物用MRI、in vivo 蛍光イメージャー

主な特許

  • レーザーマイクロダイセクション装置を含む分析装置及びマイクロチップの製造方法
  • サンプル中の成分の分析方法、サンプル中の成分の特異的分離方法及び質量分析用サンプル
  • シグナルペプチドを指標にしたアルツハイマー病の診断方法

主な論文

  • 1. Time-dependent changes in proinflammatory and neurotrophic responses of microglia and astrocytes in a rat model of osmotic demyelination syndrome. Glia 59(3): 452-462, 2011
  • 2. Minocycline prevents osmotic demyelination syndrome by inhibiting the activation of microglia. Journal of the American Society of Nephrology 21(12): 2090-2098, 2010
  • 3. Neuroprotective effect of exogenous microglia in global brain ischemia. Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 27(3): 488-500, 2007
  • 4. Protective effect of INI-0602, a gap junction inhibitor, on dopaminergic neurodegeneration of mice with unilateral 6-hydroxydopamine injection. Journal of Neural Transmission 121(11): 1349-1355, 2014