1. HOME
  2. 医薬・医療・材料応用に向けた人工核酸

医薬・医療・材料応用に向けた人工核酸

  • 工学部/工学研究科
  • 生命分子工学専攻

教授 浅沼 浩之[あさぬま ひろゆき]

http://www.nubio.nagoya-u.ac.jp/seigyo1/

シーズの概要

我々はデオキシリボ―スに代わる新たな骨格として、非環状のD-Threoninolを用いた機能性分子のDNAへの導入法を確立した。具体的にはFig.1のように、機能性分子をD-Threoninolにアミド結合で導入した核酸アナログ(Threoninol nucleotide (TN))をモノマー化し、DNA合成機でDNA中に組み込む。配列のプログラミングは、二重鎖中にTNが付加的に導入されるように行う(図1)。DNA二重鎖中で機能性分子は、その種類に寄らず相補鎖のリン酸ジエステル結合と向き合うようにインターカレートし、配向が固定される。この方法を応用することで、任意の位置に多数の機能性分子を導入することが可能となる。TNをDNAに導入することで我々は4つの安定なモチーフの設計にも成功した(図2)。
さらに我々は、SerinolおよびL-Threoninolに核酸塩基を導入したSerinol Nucleic Acid (SNA)およびL-acyclic Threoninol Nucleic Acid (L-aTNA)を開発した(図3)。これらの人工核酸は、天然のDNAおよびRNAを配列特異的に認識することができる。特にRNAに対する親和力が高く、また骨格が天然のデオキシリボ―スと全く異なることから極めて高いヌクレアーゼ耐性を有していることから、細胞内応用に適している。

この研究の新規性・独創性

天然のDNAのみでは実現不可能な新たな機能を付与するべく、様々な機能性分子の導入がこれまでに行われてきた。従来は、天然の構造との差異を最小限にするため、リボースの2’位に機能性分子を導入するといった、天然のヌクレオチドに対する化学修飾が行われてきた。しかし従来の化学修飾は、1)二重鎖を必ずしも安定化しない、2)すべての配列に対応させるためには4つのヌクレオチドに対応する修飾モノマーを合成する必要がある 3)天然のヌクレオチドの化学修飾は多段階の合成が必要 といった問題を抱えていた。我々の手法は、核酸アナログモノマーを合成し(図1)これと天然のヌクレオチドを“共重合”するという、高分子合成の手法を機能性DNAやRNAの合成に応用する斬新な方法論である。この手法を用いれば、DNA合成機でDNA(RNA)鎖中の任意の位置に任意の数を導入することが可能となり、上記3つの欠点が全て克服される。また原料は安価な上、モノマー化も極めて容易なので、コスト的にも優れている。
SNAおよびL-aTNAは、従来型の人工核酸と遜色ないDNA、RNA認識力を持っており、遥かに高い酵素耐性を有している。その上、合成も容易でコスト的に優れており、実用性に優れている。

産学連携を目指した応用研究

1)DNA, RNAを配列特異的に検出する蛍光プローブ
ヒト・ゲノムの全塩基配列の解読が終了したことで、一塩基変異多型(SNPs)や塩基欠失(Indel)といった、遺伝子レベルでの個人差に興味が移りつつある。SNPsやIndelが判れば、各個人に最適な治療を行う“オーダーメード医療”の実現が期待できる。SNPsやIndelを迅速に検出するためのプローブ開発は、このような医療に向けた重要な課題である。また近年non-coding RNAが発見されたことで、細胞内のRNAの役割を解析する蛍光プローブが注目を集めている。我々は、細胞内で分解されずに世界最高感度を持つ蛍光プローブの設計・合成に成功している。
2)核酸医薬
RNA干渉は特定の遺伝子の機能を抑制する生体システムである。siRNAなどの小分子RNAは RNA干渉を誘導することができるため、これを医薬に応用しようという試みがなされている。またmiRNAと相補的な配列を持つ人工核酸も核酸医薬として有望である。我々の開発した人工核酸は極めて高い酵素耐性を持っていることから、これら核酸医薬の原料としても有望であることを見出している。

一言アピール

我々の開発した核酸アナログ及び人工核酸は、コスト的にも機能的にも優れています。

キーワード

核酸アナログ、人工核酸、蛍光プローブ、核酸医薬、光機能

保有技術

  • 二重鎖形成と解離の光制御が可逆的に可能な光応答性DNA
  • DNAおよびRNAを高感度で検出する蛍光プローブ
  • DNAおよびRNAを認識可能な非環状型人工核酸
  • siRNAおよびmiRNAに基づいたした核酸医薬

主な機器

  • DNA合成機、TOF-MS, CD,分光光度計、蛍光光度計、イメージングアナライザー,AFM, HPLC

主な特許

  • 特願2015-003424、「人工核酸を含むオリゴヌクレオチド」
  • 特許第5920763号、「蛍光標識オリゴヌクレオチド誘導体及びその利用」
  • 特願2011-33986、「オリゴヌクレオチドプローブ及びその利用」

主な論文

  • Asanuma, H.; Kashida, H.; Kamiya, Y. Chem. Rec. 2014, 14, 1055-1069.
  • Kamiya, Y.; Asanuma, H. Accounts of Chemical Research, 2014, 47, 1663-1672.
  • Kamiya, Y., and Asanuma, H. et al., ChemBioChem,2014, 15, 2549-2555.
  • Murayama, K.; Kashida, H.; Asanuma, H. Chem. Commun., 2015, 51, 6500-6503.