1. HOME
  2. 核酸医薬Nek2 siRNAによる新規癌治療法の開発

核酸医薬Nek2 siRNAによる新規癌治療法の開発

  • 医学部/医学系研究科
  • 機能構築医学専攻
  • 病態外科学
  • 腫瘍外科学

病院講師 國料 俊男[こくりょう としお]

http://www.med.nagoya-u.ac.jp/tumor/

シーズの概要

癌は日本における死因の第一位であり、癌に対する多くの治療法が開発されている。しかし、腹膜播種や肝転移などに対する有効な治療法はなく、その治療成績はいまだ満足のいくものではない。生存期間の延長や患者QOL(quality of life)の改善のためには新たな治療法の開発が期待されている。核酸医薬は、抗体医薬、小分子化合物に続く次世代の医薬品として注目されている。核酸医薬は実用化されたものは3種類しかない先進性の高い分野である。われわれは核酸医薬の1つであるsiRNA(short interfering RNA)を用いた新規の癌治療法の開発を行なっている。

この研究の新規性・独創性

癌特異的遺伝子Nek2(NIMA related kinase 2)を標的にしたsiRNAによる癌分子標的治療法を開発した。Nek2はセリンスレオニンキナーゼであり、細胞分裂や染色体の分配と関連している。我々はマウス皮下発癌モデルでのNek2 siRNAによる腫瘍の増殖抑制効果、マウス腹膜播種モデルでのNek2 siRNAによる播種の減少、生存期間の延長を報告している。基礎研究の成果に基づき、臨床試験「膵癌切除不能患者に対するNek2 siRNA局注療法の安全性及び有効性に関する研究」を実施している。Nek2を標的にした癌治療法はこれまでなく、新規性の高い名古屋大学独自の取り組みである。

産学連携を目指した応用研究

基礎研究の成果に基づき、臨床試験「膵癌切除不能患者に対するNek2 siRNA局注療法の安全性及び有効性に関する研究」を実施している。本試験は術中に根治切除不能また症状緩和目的に胃空腸吻合術などが行われる膵癌症例を対象にしており、腫瘍にNek2 siRNAの局所投与を行うものである。主な選択基準は年齢:18歳以上70歳以下、ECOG( Eastern Cooperative Oncology Group)performance score:0-2、予後:3か月以上、腫瘍病変の最大系:10mm以上、腫瘍体積:25.2cm3未満である。主要評価項目として発生した有害事象の数、頻度により安全性を、副次評価項目としてCTでの腫瘍縮小効果にて抗腫瘍効果を検討した。これまで胃空腸吻合術を行った2例について投与を行い、Nek2 siRNAに起因する有害事象は認められず、抗腫瘍効果はSDであった。今後さらに病態の進行した腹膜播種、肝転移等を対象にしたNek2 siRNAを用いた癌治療法の開発をすすめ、生存期間など治療成績の改善を目指していく。

一言アピール

癌に対する治療法の開発は重要な課題である。Nek2 siRNAを用いた臨床試験においてNek2 siRNAに起因する有害事象を認めず、抗腫瘍効果も確認している。Nek2の標的分子として有用性は明らかであり、今後さらなる検討をすすめ、早期の実用化を目指していきたい。

キーワード

核酸医薬、Nek2、siRNA、癌治療

保有技術

  • siRNA注入技術
  • siRNA調整技術

主な特許

  • 腫瘍細胞増殖を抑制するオリゴヌクレオチド及び方法、PCT/JP2005/011227

主な論文

  • Kokuryo T, Senga T, Yokoyama Y, Nagino M, Nimura Y, Hamaguchi M.: Nek2 as an effective target for inhibition of tumorigenic growth and peritoneal dissemination of cholangiocarcinoma. Cancer Res. 67(20):9637-42.2007
  • Tsunoda N, Kokuryo T, Oda K, Senga T, Yokoyama Y, Nagino M, Nimura Y, Hamaguchi M.: Nek2 as a novel molecular target for the treatment of breast carcinoma. Cancer Sci. 100(1):111-6. 2009
  • Suzuki K, Kokuryo T, Senga T, Yokoyama Y, Nagino M, Hamaguchi M.: Novel combination treatment for colorectal cancer using Nek2 siRNA and cisplatin. Cancer Sci. 101(5):1163-9. 2010
  • Kokuryo T, Hibino S, Suzuki K, Watanabe K, Yokoyama Y, Nagino M, Senga T, Hamaguchi M. : Nek2 siRNA therapy using a portal venous port-catheter system for liver metastasis in pancreatic cancer. Cancer Sci. 107(9):1315-20. 2016