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【名大URA通信】vol.31「安全保障輸出管理業務は自由な研究を守る防波堤」

[1] 【URAコラム】「安全保障輸出管理業務は自由な研究を守る防波堤」

山下武彦(やました・たけひこ):大阪府出身、兵庫県育ち。名古屋工業大学卒業後、パナソニック株式会社入社。社会人院生として名古屋大学で博士(工学)学位取得。関西の大学勤務を経て、2021年より本学特任准教授。発酵食品作りが趣味で、ヨーグルト、甘酒、ふなずし作りも楽しむ。

ー山下さんは「学術・連携リスクマネジメント部門」で安全保障輸出管理などを担当されていますが、大学でなぜ「安全保障」や「輸出管理」が問題になるんでしょうか?

ー(山下)武器や軍事に転用可能な貨物や技術が、自国から外国に流出してしまうことを防ぐために、日本では国際的な安全保障輸出管理の枠組みに基づいて、外為法で貿易を管理しています。
 大学もその例外ではなくて、具体的には、国際共同研究などで最先端技術を外国人研究者に伝えたり、実験機材を輸出したり、留学生を受け入れて技術指導をおこなう際などに、安全保障上の問題点がないかを厳格に確認し、必要な場合は経産省への申請が必要になるんです。

ーなるほど。名大は国際共同研究も留学生も多いので、大変な業務量でしょうね。

ー(山下)そうですね。実は昨年11月に外為法が開催されて「みなし輸出」管理制度ができたので、さらに手続きの対象が広がりました。
 従来は居住者(≒日本人)から非居住者(≒外国人)への輸出等が対象でしたが、法改正後は相手が居住者であっても、外国からの強い影響を受けていないかを確認しなければならなくなりました。大学院への進学志望者も対象です。

ーそんなことまで! どうやって確認するんですか?

ー(山下)外国政府から奨学金をもらっているか、外国企業と雇用契約を結んでいるかなどを、自己申告してもらう形です。こうした項目にあてはまる場合は、私たちが受入れ担当教員と面談して、留意が必要な点をお伝えしています。今年5月に運用が開始されてから、50人ほどの先生と面談しました。

ー先生方に制度を理解していただくのは大変ですか?

ー(山下)いや、名大の先生方は、むしろ安全保障輸出管理への理解が深いと感じています。若手の先生や他大学から異動されてきた先生方にはe-learningを受けていただく制度もあります。東海地域の大学の中ではトップクラスの整備状況ですね。

PCはワイヤー錠を付けてデスクに固定する。
企業時代に徹底していた盗難防止策を今も続けている。

ー企業から大学に転職されて、大きく変わったことはありますか?

ー(山下)企業では主に研究所で研究開発に従事していましたが、当時も輸出管理業務はあったので、大学でその経験が活きていると感じます。ただ、当時は電気・電子・材料系の技術が中心でしたが、大学では医学や農学など、扱う技術の範囲がとても広いですね。
 大学での新しい経験と言えば、経産省や文科省などの中央官庁とのやりとりが多いことでしょうか。官庁と大学で情報交換をしたり、大学から要望を出したりすることもできるというのは新しい発見でした。

ー山下さんが業務で心がけていることや、今後の抱負を教えてください。

ー(山下)共同研究の相手企業の中には、関与する学生について安全保障上の問題がないかを教えて欲しい、と言ってくることがあります。こういう要望は、つっぱねています。学生の個人情報の問題もあるし、その後の職業選択の自由にも影響しかねないからです。
 国に対してもそうですが、外部の要望を丸受けするのではなく、先生方の自由な研究や学生の人権を守るためにも、大学の実情に落とし込める提案や交渉をして、私たちの部署が法的な防波堤になるように努めていきたいと思います。 

[2] 科研費 大型種目セミナー開催

科研費の大型種目への応募には、それに見合った準備が必要ですね。本学で採択経験のある先生方に、それぞれのご経験を紹介いただく貴重な機会を設けます。大型種目への応募を検討されている先生方はもちろん、中長期的に応募を検討されている中堅・若手の先生方も、ぜひご参加ください。
・日時:2023年2月3日(金)9:15~10:45 *オンライン
・話題提供:
 特別推進研究(理工系)阿波賀邦夫(高等研究院 院長/理学研究科 教授)
 特別推進研究(生物系)吉村崇(ITbM拠点長・教授)
 基盤研究(A)周藤芳幸(人文学研究科長・教授)
・対象:東海国立大学機構の教職員
・申込・詳細:https://www.aip.nagoya-u.ac.jp/event/14033.html

[3]  学術研究・産学官連携セミナー「文科省事業『共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)』に採択された 2つのプロジェクトについて」動画公開

昨年12月21日に開催した学術研究・産学官連携セミナーの動画を公開しました。昨年10月に採択された2つの文科省事業について紹介しています。お時間のある時にぜひご視聴ください(配信期間は2024年3月31日までです)。学内かVPNからのみ視聴可能です。

[4]  PI育成セミナー「大学発ベンチャーの創り方~ベンチャー設立経験談と学内資金調達攻略~」

「起業」は研究成果を社会に役立てる手段の1つです。起業を選択するメリット、起業に至った経緯、学内支援プログラム、GAPファンドプログラムの申請書作成のポイントなど、皆さんのギモンに、起業経験のある/目指す研究者と起業支援担当者がお答えします。
・日時:2023年1月31日(火)14:00~15:30 *オンライン
・講師:入澤寿平(岐阜大学工学研究科 准教授/株式会社fff fortississimo 代表取締役)、國澤和生(藤田医科大学 大学院保健学研究科 講師)
・対象:東海国立大学機構の若手研究者が主な対象ですが、学部生、大学院生、教職員であれば参加可能です。T-GExアソシエートも参加可能です。
・申込・詳細:https://www.aip.nagoya-u.ac.jp/event/13905.html

[5] 名古屋大学協力会  研究シーズ提案セミナー「人工と天然の融合:物質の光物性と触媒機能の最先端」

2022年7月に名古屋大学 学際統合物質科学研究機構(IRCCS)が設立されました。IRCCSでは、次代に求められる産業や人材育成のニーズなども各々の研究者が独自の視点で展望し、基礎科学からより踏み込んだ形で、物質機能の新しい価値や持続可能な物質社会への貢献につながるシーズ発掘を目指しています。今回は名古屋大学から重点研究分野のシーズを紹介します。
・日時:2023年1月18日(水)15:00~17:00 *オンライン
・プログラム:
「発光分子材料と蛍光イメージング技術」山口茂弘教授/IRCCS副機構長
「エネルギー応答型精密Ir錯体触媒が拓く再生可能炭素資源の水素化」
 斎藤進教授/IRCCS国際・学際・産学連携推進部門長
「金属酵素を誤作動させる分子を利用する高難度物質変換」
 荘司長三教授/IRCCS融合研究推進部門長
・対象:名大協力会会員、IRCCS関係者、後援機関会員、学内教職員
・申込・詳細:https://www.aip.nagoya-u.ac.jp/public-info/14192.html 
 (1/11〆切)

[6] 名大発アカデミックフラッシュ 第18報

若手研究者による若手研究者のための「アカデミックフラッシュ」第18弾!
・日時:2023年1月25日(水)12:00~13:00 *オンライン
・発表:KMI・新居舜 博士研究員、高等研究院/医学系研究科・飯島弘貴 YLC特任助教、ITbM・高橋一誠 特任講師
・対象:東海国立大学機構の若手研究者が主な対象ですが、学部生、大学院生、教職員も参加いただけます。
・詳細・申込:https://www.aip.nagoya-u.ac.jp/event/13610.html

[7] 中日文化センター・名古屋大学協力講座「人生100年時代を生きる 健康長寿のための3つのヒント」

若手研究者支援の一環として、一般市民向けの研究アウトリーチを実践します。今回の中日文化センターの名古屋大学協力講座では、1つの大きなテーマについて、3名の若手研究者がリレー形式で講義を行います。
・第1回:2023年1月13日(金)医学系研究科・永吉真子 助教
・第2回:2023年2月10日(金)医学系研究科・大屋愛実 助教
・第3回:2023年3月10日(金)環境医学研究科・伊藤パディジャ綾香 講師
 *いずれも 10:30~12:00、ハイブリッド開催
・詳細:https://www.aip.nagoya-u.ac.jp/event/14311.html

[8] 起業家育成「Tongali」イベント

■第2回 STAPS(STATION Ai Program for Students)
2022年夏のTongaliスクール:School IIに続き、STATION Ai と Tongali との連携イベント「STAPS」を開催します。国内最大のインキュベーション施設 STATION Ai のオープンに先駆けてスタートしているPRE-STATION Ai。学生たちが春期休暇の1カ月にわたって、起業ノウハウを吸収します。
・スケジュール:2023年2月11日(土)~3月12日(日)全6回
・対象:国内外の大学院、大学、高校、専門学校、高等専門学校に在学中の方(年齢不問)
・チーム:1~5名で応募(オンラインも可能) ※ チームでの応募を推奨
・選考:一次:応募フォームによる選考(1/10〆切)、二次:面談選考
・詳細・申込:https://tongali.net/events/staps-2nd/

■女性起業家育成ワークショップⅡ「魅せる!ピッチの作り方@名古屋大学」
どんなに良いビジネスアイディアでも顧客、パートナー、金融機関などさまざまなプレイヤーに伝わらなければ価値を実現することできません。自身のビジネスアイディアをより効果的に伝える方法を学びます。
・日時:2023年2月8日(水)、13日(月)9:00~12:00
・会場:名古屋大学東山キャンパス NIC 3階大会議室
・講師:丸本瑞葉 氏(株式会社SciEmo 代表取締役CEO)
・対象:東海地区の学部生・大学院生で、すでにアイディアを持っており、代表者が女性のチーム(1~5名)
・詳細・申込:https://tongali.net/events/women-entrepreneurs-nagoyau/

[9] Podcast & あいちサイエンスフェスイベント動画

#79- 土壌の養分キープ力、カギは「落ち根」? それとも…?
・生命農学研究科 谷川東子 准教授

■ASFサイエンストーク「スポーツ戦術をAIのデータ解析で評価する」
・情報学研究科 藤井慶輔 准教授

■ASFサイエンストーク「メダカの卵をみて、さわってみよう!」
・理学研究科 田中実 教授

■ASFサイエンストーク「アインシュタインも納得しなかった量子論の不思議」@名古屋市鶴舞中央図書館
・情報学研究科 谷村省吾 教授

■2022年ノーベル賞からみる最新研究講演会<後半>|物理学賞|量子もつれとは何か、なぜそれがノーベル賞級の発見なのか @名古屋市科学館
・情報学研究科 谷村省吾 教授


最後までお目通しいただきまして、ありがとうございました!
■発 行:名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部
■問合せ:企画・プロジェクト推進部門 情報発信ユニット  
■メール:outreach@aip.nagoya-u.ac.jp  電話:(747)6790

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