公開講座
令和元年度名古屋大学公開講座
テーマタイトル:多様性の中の均質性、均質性の中の多様性
- 開講日程:令和元年9月24日(火)~10月31日(木) 全10回
- 開講時間:午後6時00分 ~ 午後7時30分
- 開講場所:名古屋大学 ES総合館1階ESホール
- 募集定員:200名(先着順)
- 応募資格:満18才以上の方(高校生は無料で聴講できる制度があります。詳しくはお問い合わせください。)
- 受講料:7,400円(テキスト代を含む)
※選択受講も可能です。受講料(1講義あたり)9月開催回2,000円、10月開催回2,040円
※納付いただいた受講料は原則としてお返しできません。
- 申込締切:令和元年8月30日(金)
※お申込に関するお問い合わせは、以下の担当宛ご連絡ください。
メールアドレス:syakairenkei@adm.nagoya-u.ac.jp
電話番号:052-747-6584(担当:藤田)
総合テーマ概要
日本は均質な社会であり、より多様性が求められている、という議論をよく目にします。均質は悪で多様性が善、ということになりそうですが、鉄鉱石といった多様な物質を含んだものから鉄を取り出す操作は多様性の中から均質性を生み出す操作とも言えます。今年の公開講座では、均質性と多様性は対立する概念としてではなく、その中身をさまざまな事例、研究を通して見ていきたいと思います。
スーパーに「ホモ牛乳」と書かれている牛乳が並んでいます。均質化牛乳とでも訳せばよいのでしょうか、水を嫌う乳脂肪と水との親和性が高い部分が均質に混ざるように撹拌してつくります。様々な材料をつくっていく上で、均質、多様の概念は重要な役割をはたします。バランスがとれていることを意味する平衡、変化の途中の非平衡もまた耳慣れない概念ですが、さまざまな分野のキーワードとなっています。
均質性を標語に日本を語ることが一つの定説となっておりますが、海に囲まれた国、とくに長いこと海運が大きな役割を果たしてきた国が他の影響を受けずに発展していくことは不可能でありました。本学で活躍された歴史家の網野善彦氏も「海民」という切り口から日本史に新たな視点をもたらしました。飛行機の登場により、人類の移動範囲はひろがり、スピードはさらに加速しています。
人類は生物界の一員であります。その生物の一つの特徴として、40億年ほどをかけて、予測不可能な環境のなかで、さまざまな戦略をあみだし、驚くべき多様性を生み出しました。分子生物学の発展の一つの原動力は、さまざまな問題に直面したときに、大腸菌(Escherichia coli)に問いかけるというものです。不治の病とされた病気も現在治療できるようになったのも分子生物学と医学の協力の賜物です。
インターネットの目覚しい普及は、人々を繋げるだけではなく、モノを繋げる段階にはいっています。どのような社会になるのでしょうか。計算する単位(CPU)をたくさんつなぎ合わせることにより、一昔前では考えられないような大規模計算ができるようになりました。どのような影響を持つのでしょうか、興味は尽きません。
人類はまた、さまざまな言語を生み出し、社会システム、教育システムを築いてきました。2011年に日本で公開された「アバター」というSF映画では「共感」する能力、「記憶を共有」する能力が強調されていました。これからの社会のあり方を考えるための寓話ととらえることもできます。
名古屋大学では、人間の理解を目標とする人文系、社会科学系、自然の理解を目標とする自然科学系、そして現実の問題に深くかかわっていく工学系、医学系、教育系などのさまざまな分野が協働をしながら日々仕事をしております。アフリカのことわざに「早く行きたいのであれば一人で走れ、遠くまで行きたければみんなとともに歩め。」というものがあります。我々も日々の研究の急ぎ足をとめ、みなさんと多様性と均質性ついて理解を深める機会としたいと思います。将来を予測することは不可能であるかもしれませんが、足を止め、空を見上げて混沌のなかに予兆を探すことはできるでしょう。
公開講座日程・講師
回 |
講義日 |
講師所属 |
講師氏名 |
個別テーマ |
1 |
9/24 |
法学研究科 教 授 |
小畑 郁 |
「移民」社会化の進む日本における外国人法制 ――入管法2018年改正を考える―― |
2 |
9/26 |
情報学研究科 教 授 |
杉山 雄規 |
非対称な力がつくる集団運動の多様性 - 渋滞の発生、物質の様相、生物の群れ - |
3 |
10/1 |
人文学研究科 教 授 |
周藤 芳幸 |
古代ギリシア都市国家の均質性と多様性 -ギリシア文明世界再考 |
4 |
10/3 |
生命農学研究科 教 授 |
肘井 直樹 |
なぜ「生物多様性」が重要なのか? ― エコとエゴのはざまで ― |
5 |
10/8 |
情報学研究科 准教授 |
石井 敬子 |
心の文化依存性:文化間差異と文化内変動 |
6 |
10/10 |
理学研究科 教 授 |
五島 剛太 |
均質性と多様性:細胞研究者の視点 |
7 |
10/15 |
人文学研究科 教 授 |
堀江 薫 |
世界の言語はどのように異なり、類似しているのか? -言語類型論と言語獲得の観点から- |
8 |
10/24 |
情報学研究科 教 授 |
太田 元規 |
生命体を構成する物質 :タンパク質の多様性と均一性 |
9 |
10/29 |
医学系研究科 特任准教授 |
日野原 邦彦 |
がんとは何か? ー生物の多様性と進化から読み解く |
10 |
10/31 |
教育発達科学研究科 准教授 |
光永 悠彦 |
何のためのテストなのか :多様性と均質性の両立を目指して |