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花色発現機構の研究を通してポリフェノールの機能を解明する

  • 情報学研究科
  • 複雑系科学専攻
  • 生命情報論講座

教授 吉田 久美[よしだ くみ]

http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/lab/yoshida/index.html

シーズの概要

 赤から紫、青色の花色のほとんどは、アントシアニンと呼ばれるポリフェノール系植物色素によって発現しています。しかし、アントシアニン分子だけでは決して多彩で美しい花色は発色できません。細胞内に共存する助色素分子や金属イオンなどと超分子を形成することにより初めて、花色は保たれます。世の中には、ツユクサやヤグルマギク、アサガオのように青い花のある植物と、バラ、キク、カーネーションのように青色の花の無い種類の植物があります。バラ、キク、カーネーションは、三大切り花(出荷額で50%を占めます)と言われ、世界中の企業、研究者が青色花の育種にしのぎを削っています。私たちは、直接青いバラの育種を目指しているわけではありませんが、様々な青色の花の発色のしくみを、基礎科学的に明らかにしてきました。花弁組織において、アントシアニンは液胞(細胞内小器官)にかなり濃い濃度で溶解しています。液胞のpH、アントシアニン濃度、金属や助色素の共存の有無を単一細胞で解析して、発色を解明するという「単一細胞内天然物化学研究」をキーワードにアプローチしています。さらに、これらを含むポリフェノールの構造と機能に興味を持ち、合成や生理活性の研究を進めています。

この研究の新規性・独創性

最近著しく機能性研究が進んできたポリフェノール類の合成研究を行っています。たとえば、アントシアニン類やカテキン類には抗がん作用が、プロアントシアニジン類には抗アレルギー効果が報告されています。しかし、これらのほとんどは、未だに植物からの精製に頼っており、純粋な化合物の供給が機能研究展開のボトルネックになっています。安定性の高いアシル化アントシアニンに至っては、これまで全く合成例がありません。私たちは、反応経路の見直しや新規の合成法の発案により、柔軟で効率的、かつ大量合成可能な方法を開拓してきました。配糖化フラボノール類からアントシアニンへの高効率の変換反応の確立(名古屋大学特許5382676)や立体を制御した化合物の合成、新規配糖化反応の活用による、非天然型L-グルコースをもつフラボンの合成を実施しています。最近では、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの凝集阻害活性が期待されるアシル化キナ酸類の効率的合成も達成しました。また、青色花色の発現に重要な役割を果たす、金属輸送体の研究を行っており、チューリップやヤグルマギクの青色に関与する液胞型鉄輸送体遺伝子の取得、アジサイの青色発色とアルミニウム耐性に関与する輸送体の研究を行っています。

産学連携を目指した応用研究

アントシアニンによる青色発色機構の基礎的知見は、新規な青色花の育種につながるものと考えています。また、アントシアニンを含むポリフェノール類の安定化と機能性研究によって、機能性食品への応用展開も進ものと考えています。合成による種々のポリフェノール類の供給は、創薬研究の進展、創薬シーズの開拓やADME研究にも寄与します。さらに、新規のアントシアニン類は、美しい色と大きなモル吸光係数を持つことから、意匠性の高い色素増感太陽電池の色材としても期待できる分子群です。分子設計により種々の新規非天然型アントシアニンを合成し、これらを用いて色素増感太陽電池を組み立て、その性能評価を行っています。

一言アピール

アントシアニン・ポリフェノールの化学研究の分野で世界を牽引しています。これまでも多数の大学、試験場、企業の研究者の方が研究室を訪問・滞在し、化合物の単離や分析技術、構造決定などに関する技術の習得や援助を受けておいでです。2009年には第5回国際アントシアニンワークショップを、2014年9月には第27回国際ポリフェノール会議を名古屋大学で開催し、世界規模での研究ネットワークのハブが名古屋大学にあります。

キーワード

アントシアニン、 ポリフェノール、花色発現機構、色素増感太陽電池

保有技術

  • 市販されていないアントシアニン類、フラボノイド類を天然からの抽出や合成により保持
  • ミクロHPLC分析、分光分析、機器分析一般、構造決定、単離精製などが可能
  • 細胞内微少電極法による細胞内イオン分析
  • 単一細胞微量分析(フラボノイド類、金属イオン類)

主な機器

  • 細胞内微小電極装置、HPLC (フォトダイオードアレイ検出器)、分取HPLC (リサイクル分取)、ロータリーエバポレーター、微量高速遠心機

主な特許

  • 植物の液胞におけるアルミニウム集積に関わる遺伝子及び当該遺伝子がコードするタンパク質、名古屋大学、特許5713310
  • アントシアニジン類の製造方法、名古屋大学、特許5382676

主な論文

  • Kimura, Y., Kato, R., Oyama, K-I., Kondo T., Yoshida, K.: Efficient preparation of various O-methylquercetins by selective demethylation. Nat. Prod. Comm., 11, 957-96 1(2016).
  • Oyama, K-I., Yamada, T., Ito, D., Kondo, T., Yoshida, K.: Metal-complex Pigment Involved in the Blue Sepal Color Development of Hydrangea. J. Agric. Food. Chem., 63, 7630-7635 (2015).
  • Oyama, K-I., Watanabe, N., Yamada, T., Suzuki, M., Sekiguchi, Y., Kondo, T., Yoshida, K.: Efficient and versatile synthesis of 5-O-acylquinic acids with a direct esterification using a p-methoxybenzyl quinate as a key intermediate. Tetrahedron,71, 3120-3130 (2015).
  • Yoshida, K., Mori, M., Kondo, T.: Blue Flower Color Development by Anthocyanins: from chemical structure to cell physiology. Nat. Prod. Rep., 26, 884-915 (2009).