シアノバクテリアの体内時計: 時計タンパク質が時間を刻むメカニズムを解明

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  • 2014/01/28

名古屋大学大学院理学研究科の北山陽子助教を中心とした研究グループは、細菌の1種であるシアノバクテリアにおいて時計タンパク質KaiC24時間周期のリズムを刻むメカニズムを明らかにしました。この研究成果は125日付でNature Communicationsに掲載されました。

シアノバクテリアは体内時計を持つ最も単純な生物です。3つの時計タンパク質(生体に時間を教える機能を持ったタンパク質)KaiAKaiBKaiCを持ち、その内のKaiCが活性と不活性を規則的に繰り返すことで1日のリズムを作っています。KaiCはタンパク質のサブユニットがリング状に6つ集合してできています。タンパク質の活性は何らかの外的刺激によって左右され、シアノバクテリアにおいてはこのリング構造が時計タンパク質の活性/不活性を担っていると考えられてきましたが、そのメカニズムはわかっていませんでした。

北山助教はこの構造の役割を解明するため、複数のリング状構造をバラバラに分解して混ぜ合わせ、再構成しました。その結果、サブユニット間の接触面でリン酸基と呼ばれる物質が規則的にサブユニット間を移動し、分離・結合を繰り返すことで時計タンパク質の活性/不活性を制御していることがわかりました。また、リン酸化状態が固定された変異型のサブユニット1つをリング構造に混ぜると、24時間周期のリズムが崩れることが明らかになりました。このことから、リング状構造の6つのサブユニット間の相互作用によってリン酸化/脱リン酸化が生じ、KaiCの活性/非活性を制御することでシアノバクテリアに時間を伝えていることがわかりました。このメカニズムを応用して生物の体内時計を制御し、光合成など生物の代謝機能を最適な時間帯に行わせて成長を促進することも可能になると考えられます。今後は今回発見された仕組みをさらに解析し、人間を含めた様々な生物の体内時計の仕組みの理解に貢献することが期待されています。

北山陽子助教

北山助教は名古屋大学在学中に生物時計に魅いられ、大学学部、大学院における研究室生活を通して生物研究の面白さに目覚めました。植物、昆虫、動物など、多くの生物は体内に時計を持っています。そしてそれが働くメカニズムは異なる生物間でも共通していることがあり、1つの生物で解明したメカニズムが他の生物にも当てはまることがあります。北山助教は生物の仕組みの発見を純粋に楽しみながら、研究で得られた成果で広く一般社会に貢献することを目指しています。

今後の展望

体内時計を持つことが、生物にとってどのような役にたつのか、その基礎となる仕組みを解明して行きたいと思っています。また、体内時計をうまく利用できる方法も研究していきたいです。

これから研究を始める人へ

研究を通して生物の生き様の絶妙さに感心することがたくさんあります。その仕組みの秘密を世界で初めて知ることが出来る時があることが、研究の楽しみだと思います。ぜひ、挑戦してみてください。







参考

研究成果情報

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