種子の安定した成長と観察を保証する極微小ケージアレイを開発

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  • 2013/11/07

図. マイクロケージ内に固定された胚珠の成長過程長時間観察。(A) 観察開始時。(B) 成長後。

名古屋大学大学院理学研究科/ERATO東山ライブホロニクスPJナノ工学グループの新田英之グループリーダー・特任講師、朴鍾淏(パクチョンホ)研究員1を中心としたグループは、植物の種子を固定し、長時間にわたる培養・観察を容易にする微小な檻、「マイクロケージアレイ」を開発しました。2この研究成果は2013年9月にSensor & Actuators B: Chemicalに掲載されました。



植物の受精卵が成体になるまでのメカニズムを解明するためには、長時間種子を安定的に培養すること、またそれを生きたままの状態で、リアルタイムで観察すること(ライブイメージング)、多数の種子を同時に同じ条件で培養・観察することが必要不可欠です。これまで種子の発生観察は、種子を基板に無作為に撒き、経過を観察するという手法がとられてきました。しかし従来の手法には非効率的な要素が多く、同時に多数の種子を観測する時に種子を見失ったり、判別に時間がかかったりすることがありました。このため、種子の成長を阻害することなく固定したままで培養・観察を行う技術や、それを効率よく簡単に行う手法の開発が課題とされてきました。

ナノ工学グループでは、一辺が数百マイクロメートル3という極めて小さな檻が格子状に並んだ「マイクロケージアレイ」を開発し、種子を檻に閉じ込めて培養・観察することを考案しました。この手法を用いた場合、多数の種子を見失うことなく長時間観察することができます。また、檻は種子の成長を阻害しないための特殊な設計と、柔軟性を持った素材(ジメチルポリシロキサン)で作られているため、今回開発されたマイクロケージアレイを用いることで、成長する種子の内部を生きたまま長時間、詳細かつ簡単に解析することができます。今後は受精卵から幼植物が作られる仕組みの解明や、種子の成長向上、植物増産技術につながることが期待されています。

1. 東京工業大学精密工学研究所初澤研究室助教 (2013年4月~)
2. JST戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「東山ライブホロニクスプロジェクト」の一環。
3. 1マイクロメートルは、1ミリの千分の一。

新田英之 グループリーダー・特任講師

マイクロ工学・ナノバイオ科学という先端分野で、生命科学、電気電子工学、機械工学、分析化学など、多様な専門分野、価値観との出会いを楽しみながら、日本、フランス、米国で研究を行ってきた。現在はJST, ERATO東山プロジェクトにて、植物科学分野とのコラボレーションを進めている。

今後の展望

マイクロケージアレイ開発を可能にしたマイクロマシニング技術が、より一層植物科学分野に応用され、生命科学の突破口を開けるよう頑張りたい。

これから研究を始める人へ

どの業種にも当てはまることであるが、大成したいのであれば自分がやりたいことをみつけ、それができる一番良い場所を、全世界を見渡して探し、そこに行くように。





参考

研究成果情報

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