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ハイライト論文

人文学:GCOEプログラム「テクスト布置の解釈学的研究と教育」第13回国際研究集会

  • 2012/01/09

COEプログラム「テクスト布置の解釈学的研究と教育」主催の第13回国際研究集会が開催されました

これまでNagoya University Researchでは主に自然科学の分野における研究成果を記事にしてきました。しかしながら、名古屋大学は人文科学、社会科学の分野においても国際的な研究拠点となっております。今回は、その拠点の一つである名古屋大学グローバルCOEプログラム「テクスト布置の解釈学的研究と教育」が主催した第13回国際研究集会(2011年12月9-11日、名古屋大学文系総合館7Fカンファレンスホール、及び、法学部棟906号室)を特集いたします。

名古屋大学グローバルCOEプログラム「テクスト布置の解釈学的研究と教育」は文部科学省の支援のもと、後述の「テクスト布置の解釈学」をベースに人文科学・社会科学にまたがる分野を研究する若手人材を育成し、先端的な研究を展開する研究・教育プログラムです。一流の研究者との交流と研究成果の国際的な発信を目的とした国際研究集会の開催、大学院生の海外派遣事業、論文顕彰制度の実施等の施策を通じて大学院学生や若手研究者の育成を行うなどの活動を行っています。

ところで、本プログラムの主要な研究テーマとなっている解釈学とはなんでしょうか?「ある著者が書いたテクスト(註釈の労に値する文書)の内容を解釈するとはどういうことか。テクストの中から著者の意図を忠実に見抜くことか。それとも、著者とは独立して読者が自分の哲学のもとに読み解くことか。」この疑問について理論的にあるいは個別テクストに即して探求するのが解釈学です。

各種テクストを解釈することが研究の中心となる人文科学分野において、解釈学は重要な地位を占めており、古来より盛んに研究されてきました。しかし、特に著者と読者の位置づけを巡る議論を中心にその結論は出ておらず今なお途上にあります。この深遠なテーマについて名古屋大学グローバルCOEプログラム「テクスト布置の解釈学的研究と教育」では、「テクスト布置の解釈学」と呼ばれる新しい概念を導入し、これまでの解釈学の限界を超えるべく研究を進めています。

「テクスト布置の解釈学」は、図のようなモデルになります。図にあるように、読者、テクスト(読者が存在する読む価値を持った文書)、著者の間には、テクストが記された時の歴史的背景を含むパラテクスト(題名、副題、前書き、後書き、脚注をはじめとするテクストを分類するもの)、前テクスト(草稿のようなテクストの準備段階のもの)、メタテクスト(テクストに関する註釈)、間テクスト(派生・引用テクスト)があり、その中で、読者の価値観・考え方と著者の意図が互いに影響しあい、読者と著者の極の間を行き来しながら、異なる考え、思想を持った著者と読者がテクストを介して出会い理解しあった時(地平の融合)に解釈がなされるとするものになります。

第13回国際研究集会では、「テクスト布置の解釈学」に関連する先端的な研究の成果が発表されました。テクストは、人文科学から社会科学、自然科学にいたるまで幅広い分野に存在します。シンポジウムにおいても、科学哲学や法哲学、文学作品の解釈からガダマーをはじめ「テクスト解釈学」に関係が深い哲学者に関する研究まで様々な発表が行われました。

本国際研究集会では、個別発表に先立ち文学研究科長である羽賀祥二教授からの挨拶、本プログラム運営に深く関わってきた佐藤彰一教授からの開会の辞、そして、本研究集会コーディネーターである松澤和宏教授からの趣旨説明がありました。挨拶、開会の辞では、極めて優れた博士課程修了学生しか受賞できない日本学術振興会育志賞を本プログラムの支援を受けた大学院生が受賞したことをはじめ、本プログラムが次世代を担う若手研究者の育成に貢献し、内外で高く評価されていることなどこれまでの成果や本プログラムの歩みが紹介されました。また、趣旨説明では、「テクスト布置モデル」を中心に本研究集会に関する説明がなされました。

その後、3日間に渡って個別の研究発表が行われました。名古屋大学からは、発表順に、松澤和宏教授、金山弥平教授、クレール・フォヴェルグ特任准教授、森際康友教授が講演を行いました。

この中で、松澤教授は、"ソシュールにおける言語の科学と解釈学"と題し、言語学者であるソシュールが残した言語論に関する草稿について研究発表を行いました。ソシュールはフランスの言語学者であり、言語を記号の体系と規定したことでよく知られています。具体的には、ソシュールは、言語は記号からなり、記号とはシニフィアン(例えば日本語の「ヒ・ト」という音の連鎖。発音)とシニフィエ(例えば「ヒト」が人間という概念をさすように発音が指す言葉の意味、概念。)が一体となって結びついたものと提唱しました。松澤教授によれば、そのソシュールが残した草稿には、「言語の演繹的な体系化は難しい。むしろ、本GCOEプログラムが関連する解釈学的な考えが深く関わり、解釈学的循環構造(部分を理解するには全体を理解し、全体を理解するには部分を理解しなければならないという相互循環的な関係を通して理解が深まっていく構造)を取っている。そして、言語におけるシニフィアンとシニフィエの結びつきは明確な理論的合理性に基づかず恣意的(論理的な必然性がない)であり、伝承にもとづき正当化された結果である」ことが書かれているといいます。つまり、ヒト(という概念、シニフィエ)をなぜヒト(という発音、シニフェアン)というのか、それは、古来より伝統的にヒトをヒトと発音し言い継がれてきたこと(伝承されてきたこと)で、正当化されたものであり、最初に理路整然とした体系が存在し、その体系に基づいて、正当化され広まったなったわけではないということになります。このことは、テクスト布置の解釈学とも深くかかわる哲学者ガダマーが提唱する「歴史の働き(テクストを解釈するときはその伝統・歴史が深く関わり作用する)」とも結びつくものであり、言語学が解釈学と深く関係していることが発表されました。

ギリシアの古代哲学が専門である金山教授は、想起(単に記憶を思い出すことではなく、思い出すべきことが他に記憶されている知識と結びつき起こされること)と探求、そして覚え書の関係を中心とした"プラトンのテクスト"と題されたプラトンについての研究発表を行いました。クレール・フォヴェルグ特任准教授は"ライプニッツとガダマーにおける地平と観点"について研究発表を行い、テクスト解釈学において重要となる地平という概念を残したガダマーとライプニッツのそれぞれの地平に関する考察について講演しました。テクスト解釈学は社会科学分野の法哲学も包含しており、森際康友教授は法テクストの解釈に焦点をあてた"法解釈の機能論的考察"について研究発表を行いました。

名古屋大学以外からも、自然現象をテクストと見立てそれを解釈する解釈学に自然科学は帰着するとするトマスクーンの科学哲学論に関する発表を行った東北大学野家啓一教授をはじめ、テクスト解釈学に関連する国際的権威である J.グロンダン教授(モントリオール大学)やP.グロード教授(パリ第4ソルボンヌ大学)による講演が行われました。

国際研究集会には、グローバルCOEプログラムに属する若手研究者や一般市民も参加し、活発な質疑応答が交わされ、盛況のうちに終わりました。

図:テクスト布置の解釈学の概略図

Affiliated Researchers

Hermeneutic Study and Education of Textual Configuration Global COE Program

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