太陽系をもっと身近に

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  • 2013/05/22

三宅芙沙(ふさ)日本学術振興会特別研究員インタビュー

三宅芙沙(ふさ)さんは、日本学術振興会の特別研究員制度の支援を受け、現在、名古屋大学大学院理学系研究科の博士課程の3年に在籍し、太陽地球環境研究所で研究をされています。三宅さんは屋久杉の年輪から炭素14を抽出することで過去の宇宙線量を測定し、過去の宇宙環境とそれが地球環境に与えた影響について研究しています。この研究は天文分野にとらわれず海外の歴史学者からも注目されるなど、分野や国境を超えて様々な学問に貢献しています。また、過去の宇宙環境の変化とそれに伴う地球環境の変化を研究することは、今後の宇宙環境の変化を予測し、それが地球に及ぼす影響への予防策をたてることにもつながります。同研究所の増田公明准教授と共に発表された論文がNatureやNature Communicationsに掲載されるなど、国内外から注目される若手研究者にNagoya University Researchがインタビューをしました。過去を学ぶことで未来を予測する、そんなスケールの大きな研究に取り組む三宅さんの素顔に迫ります。

なぜ研究者の道を選ばれたのでしょうか。

宇宙に興味を持つようになったのは、中学生のころの総合学習の授業がきっかけでした。ゆとり教育の一環で導入された授業で、名古屋大学や名古屋市科学館の先生方や学芸員の方々のお話を聞きに行きました。その中で宇宙にはまだまだ明らかになっていないことがたくさんあることを知り、それを解き明かしたいと思うようになりました。当時は銀河の形成や星に興味がありましたが、大学進学後、様々な授業を受ける中で身近な太陽系の宇宙に興味を持つようになりました。自分たちの暮らしている宇宙であるにも関わらず、太陽系にはわからないことが溢れています。身近であり、わかりそうでわからない。これが研究する中で大きなモチベーションになっています。

研究を進めていくうえで苦労した点

修士課程の1年次から試料の削り方を学び、2年次から本格的に炭素14濃度測定から宇宙線強度を復元する研究を始めました。この研究で大変なことは、根気・正確性を求められる作業を常に行うこと、またその作業が報われるかどうかは最終的に炭素量を測るまでわからないことです。屋久杉から試料を削り取り、炭素を抽出して量を測定する、という作業は時間も集中力も要します。使った屋久杉は樹齢約1900年ですが、1か月に測定できるのは約30年分です。今まで約600年間分の年輪から炭素14濃度を測定してきました。これはとても地道な作業であり、測定するまでその作業が報われるかどうかがわからないため忍耐力も必要です。2012年と2013年には過去の宇宙線の急増、そしてその後の減少を発見して国内外で大きく取り上げられましたが、これもこれまでの地道な研究のたまものです。

今後の研究に関する夢や抱負について

今後もさらに屋久杉の年輪内の炭素14濃度を測定し、これまで発見した炭素14の急変動(西暦775年、西暦994年)と同様の現象を、ほかの年代でも見つけていきたいと思います。まずは現在測定している屋久杉の年輪約2000年分の連続したデータを取ることが目標です。さらに、世界にはより古い木の年輪が残されています。屋久杉を計測した後は、過去1万年以上にわたる樹木年輪を用いて、1年ごとに測定することで、過去の宇宙環境の変化について研究していきたいと思います。

これから研究をする人へ

私自身高校時代には数学物理は得意ではありませんでしたが、宇宙のことを勉強したいと思い頑張ってきました。少し苦手なことがあってもあきらめずに続けていくことが重要だと思います。

参考

これまでの研究成果
10世紀における宇宙線イベントの発見
8世紀における宇宙環境の大変動を発見
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