第12回日独共同大学院セミナー

  • 2011/11/30
Nagoya University Researchでは世界に誇る特筆すべき名古屋大学の研究成果を広報しております。今回は、そのような研究成果を生み出す源となる研究人材を育成する試みに焦点をあて、名古屋大学とドイツ・ミュンスター大学との共催で2011年10月3日~4日に名古屋大学野依記念物質科学研究館において行われました日独共同大学院プログラム第12回日独共同セミナーを特集いたします。

図1:名古屋大学巽教授による開会のあいさつ
図2:講演を行うミュンスター大学Bart-Jan Ravoo教授

グローバル化が進む中で、国際的に活躍できる研究人材の教育が求められております。名古屋大学においてもGCOEプログラムをはじめとして、そのようなニーズに答えた研究・教育プログラムを実施しております。その一つが日独共同大学院プログラムです。

日独共同大学院プログラムは、日独の大学院間の交流を促進するため、日独双方の大学が博士後期課程学生を相互に受け入れ、共同で指導し、教育研究の国際化を支援することを目的に日本学術振興会が支援するものです。本プログラムの支援に基づき、名古屋大学理学研究科物質理学専攻および同大学物質科学国際研究センターとミュンスター大学化学薬学部(ミュンスター大学はドイツ研究振興協会からの支援を受けて本プログラムを実施しております)では「複雑系機能物質の化学に関する共同指導プログラム」を実施しております。

Japan-Germany-fig2 図2:講演を行うミュンスター大学Bart-Jan Ravoo教授 交流相手のミュンスター大学は、ドイツで3番目に大きな大学であり、400以上の研究拠点と国際的な交流協定を結ぶなど非常に国際化された大学です。一方、名古屋大学理学研究科物質理学専攻も国際的な研究教育拠点整備プログラムであるGCOEプログラムに採択されているなど世界的な物質科学分野の研究拠点として認知されております。国際的研究拠点である両大学が協力し、物質科学分野において、本プログラムに基づき、互いの大学の学生や若手教員を派遣しあうなどの学術交流を行うことで国際的な研究人材の育成を行っております。

第12回日独共同セミナーは本プログラムの一環として行われ、有機化学、無機化学などをはじめとする幅広い物質科学の研究分野をバックグランドに持つ互いの大学の大学院生と教員が相互に進めている共同研究の進捗状況等を発表することを目的として行われました。セミナーの特徴は両大学の著名な教員の研究発表に加えて、名古屋大学の大学院生や名古屋大学に交換留学中であるミュンスター大学の学生も研究発表を行う点です。


図1:名古屋大学巽教授による開会のあいさつ

セミナーは本プログラムのコーディネーターである名古屋大学巽和行教授からの挨拶で始まりました。本セミナーは、二日間の日程で行われ、研究発表は、学生セッションを含む口頭発表、ポスター発表から構成されておりました。研究者の発表としては、ミュンスター大学からはBart-Jan Ravoo教授の"Biomimetic Carbohydrate Receptors in Solution and on Surfaces"をはじめとする研究が、名古屋大学からは渡辺芳人教授の" Novel Approaches for the Construction of Metalloenzymes"をはじめとする研究が発表されました。


図4:講演を行う名古屋大学博士課程の谷藤さん

このうち、Bart-Jan Ravoo教授の研究は、生体内で重要な役割を果たしている炭水化物受容体について動的コンビナトリアルライブラリ(Dynamic Combinatorial Library)を利用した分子相互作用(ホストゲスト相互作用)探索手法を使用し人工的に構築するという非常に斬新なものであり、将来的には薬品開発等へ利用できるなど有用性の点からも大きな注目を集めているものになります。一方、渡辺芳人教授の研究は、生体内で重要な役割を果たしている金属酵素反応の研究に焦点をあてたものであり、安価な過酸化水素で駆動するものの基質特異性を持つ金属酵素の一種P450BSβに基質多様性を付与する手法の開発など人工的に金属酵素系を創るという非常に挑戦的な研究の基礎となる重要な成果が発表されました。この他にも、両大学の研究者らによる画期的な研究成果が発表されました。 加えて、学生の研究発表も口頭/ポスター形式で行われ、名古屋大学の学生からは谷藤一樹さんの"Ligand Exchange Reaction of Highly Oxidized [Fe4S4] Clusters Bearing Amides and Formation of a [Fe-Fe4S4] Clusters"をはじめとする研究が発表されました。


図5:特別企画「歌舞伎:入門―化粧・着付け・踊り―」

本セミナーは、一流の研究者の研究を聞くことができる貴重な機会を提供する点で非常に特徴的なものとなっており、活発な質疑応答が交わされておりました。また、学生の発表においては、一線級で活躍する研究者からの質問にも堂々と答える学生発表者の姿が印象的でした。このように、本セミナーは、日独共同大学院プログラムの目的である、国際的に活躍できる研究人材を育てるという観点から非常に有意義なものとなっておりました。

セミナーは、2日目の16:00にミュンスター大学Gerhard Erker教授の閉会の辞を持って終了しましたが、終了後、日独交流150周年を記念した特別企画「歌舞伎:入門―化粧・着付け・踊り―」が行われ、ドイツの総領事が来学されるなど、研究面だけでなく文化面においても日独間の国際的交流が行われました。

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