2014年 文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞 諸田智克助教 特別インタビュー

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  • 2014/08/25

名古屋大学大学院環境学研究科 諸田智克助教は、惑星探査から得られたデータをもとに太陽系の歴史をたどる研究をされています。太陽系最小の地球型惑星(岩石惑星)である月は、太陽系の歴史を紐解く上でなくてはならない存在です。太陽系が誕生してからすぐに内部が冷えたため、月はマグマやプレートテクトニクスによる地表変化をあまり受けることなく太陽系誕生時から現在に至るまでの痕跡を保存しています。月の表面に存在するクレーターは天体衝突の跡であり、その大きさや数密度を調べることで月やその近くに存在する地球がどのような環境に置かれてきたか、また太陽系で起きた天体衝突の頻度や時間変化、地球型惑星の形成過程について知ることができます。惑星探査データから過去の天体イベントをたどり、未来に何が起きるかを予測する。「月周回衛星かぐやデータを用いた月の進化過程に関する研究」で平成26年度 文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞し、注目を集める若手研究者にNagoya University Researchがインタビューをしました。

なぜ研究者の道を選ばれたのでしょうか。

子供のころから宇宙を眺めることが大好きで、肉眼でも見える月や惑星に興味を持ちました。大学では地球科学を専攻しましたが、地球とその周りの天体を一つのシステムとして見ることが重要であることを学び、広く惑星科学を研究するようになりました。研究者になる、ということは物心がついたころから憧れていましたし、社会に出て企業で働くことは何か違うと感じていました。人工的に作られたものよりも自然にあるものがどのようにできたかを探求したい、それで生活ができたらどんなにいいだろうと思っていました。

研究を進めていくうえで苦労した点

宇宙を研究するには忍耐が必要です。惑星探査プロジェクトは始動から実際にデータが取れるまで10年以上かかります。また、惑星探査の計画立案、観測器の開発、ロケットの打ち上げ、観測運用、データ処理の過程で数百人、数千人の尽力が必要であり、予算規模も数百億円単位です。多大なコストと時間をかけて進めたプロジェクトも、何か一つ間違えると失敗に終わります。かぐやプロジェクトのロケットの打ち上げは、祈る思いで見ていました。そんな忍耐の後に、惑星探査で素晴らしいデータを得られた時の喜びは研究者としては最高です。

今後の研究に関する夢や抱負について

地球を含めた天体の進化史をできるだけ滑らかにつなぐことが目標です。惑星探査で実際に得られたデータをもとに、数値計算や実験研究などの知見と照らし合わせて太陽系の歴史をつなぎたいと思います。これまで月周回衛星「かぐや」に携わってきましたが、現在は小惑星探査機「はやぶさ2」(2014年度打ち上げ予定)、月着陸探査機「SELENE-2」(計画段階)の両プロジェクトに参加しています。これらのプロジェクトから得られるデータから、太陽系への理解をさらに深めていきたいと思います。また、大きなプロジェクトを国の予算で動かしているため、それに見合う研究であることを一般の方に伝えることも今後の目標です。

これから研究をする人へ

研究者になるために、まずいろいろなことを学んで自分の可能性を広げることが重要です。でも私はいかに一つのことを極めて唯一の存在になるかがより大切だと思っています。好きなことを徹底してやることができる人が研究者になれたら、それは幸せなことだと思います。自分にしかできないことを見つけてください。

参考

研究成果情報

月周回衛星「かぐや」
小惑星探査機「はやぶさ2」
平成26年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞 受賞者一覧
JAXA Channel (YouTube)

研究者情報

諸田助教ウェブサイト
地球惑星物理学講座
環境学研究科 地球環境科学専攻・地球惑星科学系
大学院環境学研究科

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