世界で注目、「女性活躍の名大」

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  • 2017/07/03

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 名大と言えば?
 「ノーベル賞」かもしれないが、東京の知人たちからは「名大と言えば、アジア」、そして「名大と言えば、女性」という答えが返ってきた。後者はもっぱら女性からだったが、松尾清一総長が昨年、中国でインタビューを受けた際のテーマはノーベル賞と男女共同参画だったそうだ。名大の男女共同参画の取り組みは、国内外で名大の代名詞といえるほどに知られているようだ。

 その名大の男女共同参画が今、一つの大きな節目を迎えている。まず、男女共同参画室が7月1日から男女共同参画センターに格上げされ、従来の支援業務だけでなく、研究や教育も行い、国内外での様々な活動の拠点としての機能を担うことになった。10月末にはジェンダー・リサーチ・ライブラリが開館する。ジェンダー関連の書籍最大4万冊を収蔵、こちらも名大のみならず広く国内外のジェンダー研究や教育の拠点とする計画だ。東山キャンパスの山手通り沿いで建設が進む2階建てのビルは、篤志家の寄付によるという。
 一方、やはり篤志家の寄付により、ジェンダー平等支援基金も6月にスタートした。苦労した経験を持つ女性が、女性研究者の数を増やすために役立ててほしいと数千万円を寄付、それを基金として活用する。名大基金としては、女性リーダー育成支援事業を目的とした基金が昨年スタートしており、合わせて一般からの寄付を募り、女性を支援するさまざまな事業を展開していくことになる。
 大学は、こうした人々の思いに支えられているのだということ、そして、大学に寄せられる期待はそれだけ大きいのだと改めて思う。


男女共同参画センター長に就任した束村博子・生命農学研究科教授。専門は生殖科学。


 名大での男女共同参画の取り組みは今世紀初めころにさかのぼる。1999年に男女共同参画社会基本法が施行され、それを受けて、2001年度に評議会で「名古屋大学における男女共同参画を推進するための提言」が決定された。続いて03年には男女共同参画室も創設された。全国の大学の中でも非常に早く、女性の活躍を大学の活性化につなげようという、トップダウンで始まった動きだったという。その後、とりわけ理系の女性研究者を増やすことが大きな課題となり、私も取材していたが、名大は業績が同じなら女性を採用するというポジティブ・アクションを打ち出し、逆差別ではないかという声も上がって話題になっていたことを思い出す。この方針は今も掲げられている。
 その後も、研究リーダーを採用するための女性枠を設けたり、学内に保育園や学童保育所をつくったりするなど、女性研究者を増やし、支援するための環境整備を全国の大学に先駆けて進めている。国立大学協会が今年発表した統計によれば、名大の女性教員の比率は17.8 %で、まだまだ少ないとはいえ旧帝大と呼ばれる七大学の中ではトップだ。他大学からの視察も多く、私が男女共同参画室を訪ねた6月末、ちょうど東京女子医大から3人の視察団が訪れ、熱心に話を聞いていた。>>「名大ウォッチ」で続きを読む。


辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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