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30代半ばの女性教授誕生の背景

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  • 2017/07/18

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 名古屋大学理学系研究科では、30代半ばで教授に就任した女性2人が活躍している。全国を見渡しても、まず例のない若い女性教授だろう。そもそも男性でもこの年代で教授になることは珍しいが、名大では若くして教授になる例がある。職位にとらわれずに交流ができる自由な雰囲気に加え、「女性の名大」といわれるだけのさまざまな努力も背景にあるのだろうか。その中には、女性に限定した採用枠という思い切った手立てもあった。

 女性限定の公募によって2011年に採用されたのは生命理学専攻の上川内あづさ教授だ。当時36歳。東大で薬学の博士号を取得した後、ドイツ留学などを経て、東京薬科大の助教を務めていた。「教授職に応募しようなどとはまだ思っておらず、女性限定公募ということで初めて自分を候補者として意識しました」と話す。もし、女性限定でなければ、このとき応募することはなく、先延ばしにしていただろうという。
 この枠は、PIと呼ばれる教授など独立した研究者の採用をめざす、全国でも初めてのものだ。採用された女性にはまず、大学が人件費などを負担し、5年以内に正規のポストに移ることになっており、あいた分は次の採用枠に当てる仕組みだ。いずれ正規のポストに就く以上、選考は通常の公募と変わらない厳しさで行われる。女性枠で採用されるなら、おそらく通常の公募枠でも採用されるに違いない。それでも、女性限定というだけで、通常の公募ではまずないような大勢の応募がある。


 上川内あづさ教授


 上川内さんは自身のことを振り返り、「なぜ女性枠だから応募しようと思ったのか、その思い込みは何だったのか、自分でもよくわからない」というが、一般的に男性の方が自己評価が高い、つまり女性は自分を過小評価しがちなことが背景にあるかもしれない。
 そして今、応募を受け付ける側になってみて、女性の応募者がきわめて少ないことを改めて実感しているという。むろん、女性研究者そのものがもともと少ないことがある。上川内さんが所属する生命理学専攻の森郁恵教授は、そうしたなかで女性を増やすには「分野を絞らず、優秀な研究にこだわる人事」が重要だという。対象分野が狭ければ、該当する女性はきわめて少なくなるが、広げればそれだけ人材のプールも大きくなる。
 地震学者であるロバート・ゲラー東大名誉教授は7月12日付日経新聞の「大学国際化の課題」と題したインタビューで、外国人が増えない原因として「採用基準が曖昧で、自分の弟子や仲間だけが条件に当てはまるようにしている。外部に優れた人材がいても確保できず、大学がタコツボ化している」と手厳しい指摘をしている。女性研究者の採用にも共通する面がありそうだ。タコツボだと数の少ない女性が入るのは難しい。米マサチューセッツ工科大でも、理工系の女性教員を10年でほぼ倍増させた際、人材を広く求めることで水準を保ったとしていた。
 いずれは女性限定の枠など不要になるときがくるだろうし、早くそうなってほしいと思う。しかし、現状ではこうした枠は一定の役割を果たしていると言っていいだろう。

 一方、上川内さんは、女性の応募が少ない背景には、女性特有の課題もあるのではという。......>>「名大ウォッチ」で続きを読む。


辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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