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特集

世界の若者が集う自動車工学のメッカ

  • 2017/07/28

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 「名大の自動車工学は世界的に関心の的、インドでも有名になってきましたよ」
 ある国立大学のインド事務所長を務める友人の言葉だ。自動運転が注目される今、「世界一のトヨタ」のイメージが名大と重なっている面もありそう、とも言うが、「名大の自動車工学」の看板が光っているらしい。インドの最高学府インド工科大の教授の息子も昨年、名大に入学したという。
自動車工学の看板は工学部ではなく、英語で講義を受けられるグローバル30プログラムの一つとして掲げられている。看板が掲げられていなくても、その中身は機械工学を始め、工学部のさまざまな学科で教えられていることはいうまでもないが、やはり「ナゴヤの自動車工学」の看板のアピール力は大きいということだろう。


 その看板のアピール力を実感する機会があった。夏期集中プログラム「自動車工学における先端技術と課題」(Nagoya University Summer Intensive Program, 略称NUSIP)である。海外からの学生を対象にしたプログラムで、受講料は2000ドル、旅費なども加えれば個人負担はおそらく50万円くらいになる。それでも希望者は多く、毎年約2〜3倍の競争率になるという。私費でこれだけの参加者が集まるプログラムはちょっと珍しそうだ。2008年に始まり、今夏でちょうど10年目を迎えたこのプログラムの成功が、グローバル30での自動車工学の開講にもつながった。
 きっかけは、米ミシガン大工学部と協定を結んでいるのに、もっぱら名大生がでかけて行くばかりで先方からはあまり来ない、このアンバランスを是正するために何かできないかという議論が工学部内で起きたことだった。浮上したのが、名古屋という地域の強みでもある自動車工学を中心としたサマープログラムだった。産業としても勢いがあり、東海圏にはトヨタ、ホンダ、スズキといったメーカーに加えてデンソーなどの関連企業も多い。工場もある。こうした企業では卒業生が活躍しており、名大とのつながりも強い。講義は名大の教授陣と、企業の専門家が受け持ち、自動車工学の基礎から最先端までをカバーすることになった。むろんすべて英語、参加資格は学部3年生以上と大学院生だ。ミシガン大学など提携校を中心に、他の大学にも広げていった。当初から携わっている石田幸男特任教授によれば、「企業の第一線の専門家を含め、これだけの講義がまとまって聞ける場所はちょっとほかにはない」。参加者はどんどん増え、現在の定員は40人、希望者が多いために1校当たり3,4人までに絞ってもらうようにしているそうだ。


自動車市場の動向について、企業の専門家の講義を受ける(7月7日、工学部で)


 今年は6月14日から7月20日までの6週間だった。海外からの参加者は37人、在籍する大学で見ると、米国の9校から20人、イギリスの1校と香港の2校から5人ずつ、カナダの2校から3人、イタリアの1校から2人、スウェーデンと中国が1人ずつと、実に国際性豊かな顔ぶれだ。中国、台湾、あるいはインドなどアジア各国から欧米の大学へ留学している学生も多く、講義をのぞいてみると、半分くらいはアジア系という印象だった。女性は7人で、2割弱を占める。名大工学部の女子学生は1割弱だからその2倍になる。

 オリエンテーションの後、プログラムは京都、奈良への旅行から始まった。日本の文化に触れてもらうことも大きな目的なのだ。名大に戻り、午前中は日本語の授業、午後は設計・製造からデザイン、安全性、さらには市場動向や将来像まで、名大の教員と企業の専門家による自動車に関わる広範な講義だ。毎年、特別講義もあり、今年はドイツ・ボッシュ社の日本法人の役員が不確実な今日の世界における挑戦について語った。2010年にはトヨタの豊田章一郎名誉会長もクラスに参加して学生たちと議論した。>>「名大ウォッチ」で続きを読む。


辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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