同窓生がつなぐもの
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- 2017/07/28
国際機構
辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)
マレーシアの首都クアラルンプールにあるマラヤ大学の講堂で7月31日、「ノーベル賞への道」と題した益川敏英特別教授の講演会が開かれた。これまでに20回以上も聞き役を務めてきたベテランの杉山直・理学系研究科長が今回も登壇、マラヤ大教授の質問に答える形で、益川さんの子供の頃の思い出から学生時代、ノーベル賞につながった研究、そして若者へのアドバイスまで、知られざるエピソードも交えながら話を引き出していった。大講堂を埋めた学生たちは感激の面持ちで聞き入り、次々に質問も出た。
恩師坂田先生の写真を前に語る益川敏英特別教授
ノーベル賞受賞者には講演の依頼が国内外を含めて引きもきらない。とても全てに応えることはできず、海外ともなればなおさらだが、今回の貴重な講演会は、昨年2月に創設されたばかりの名古屋大学全学同窓会マレーシア支部のたっての願いで実現したという。
7月末からの約1週間、松尾清一総長を始めとする名大一行がマレーシアとタイを訪ねた。益川さんの講演会はその目玉行事の一つだった。多くの在校生を前に総長によるノーベル賞受賞者輩出の名大の紹介もあり、名大を卒業した現地の同窓生にとっては何よりの贈り物になったに違いない。この訪問に同行し、母国と日本との架け橋として活躍している多くの同窓生たちに会うことができた。
名大全学同窓会の会長は2002年の創設以来、トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎氏が務めている。マレーシアへ発つ前日の7月28日、「愛知の発明の日」の行事として「ものづくり、ひとづくり」と題した講演があった。発明の日は豊田佐吉が最初に動力織機の特許を取った8月1日に因んでいる。今年はその生誕150年に当たることを記念した特別講演会で、サテライト会場が設けられるほどの盛況ぶりだった。同氏は、5歳の時に亡くなった祖父・佐吉の遺訓である「研究と創造」がこれからますます重要になると語り、結びには大好きだという祖父の言葉「障子を開けてみよ。外は広い」を引いて、「若者は世界に目を向けて大きな夢を描いてほしい」と期待を述べた。これはそのまま、名大の後輩たちへの言葉でもあるだろう。今年92歳、足こそ弱ったとはいえ、入学式に卒業式、そしてホームカミングデーと主要な行事には欠かさず出席して力強く祝辞を述べる。母校への思いは並々ならぬものがあることを感じさせる。>>「名大ウォッチ」で続きを読む。
辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。 |