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EVの影の主役、炭素繊維の負けられない戦い

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  • 2017/11/08

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 電気自動車(EV)に自動運転、将来の車のあり方をめぐる話を聞かない日はない。「狂騒曲」とまで言われるほどの過熱ぶりである。何がどう広がっていくのか、どこの誰がリードすることになるのか、その行方はまだ混沌としているが、車というものが大きく変わり、引いては自動車産業の姿も一変しかねない。競争は激しく、関心も集まるゆえんだ。
 そうした中、名大で行われたある発表を聞いて、将来の車がどういう形になるにせよ、必要とされる技術があることに気づかされた。車体をできるだけ軽く作る材料である。軽ければそれだけ燃費はよくなる。とりわけ、電池の重さが現状ではガソリンエンジンの何倍にもなるEVにとっては、車体が軽ければそれだけ走れる距離が長くなるため、軽さはきわめて重要だ。EVの影の主役と言えるかもしれない。
 その有力候補が炭素繊維を用いた複合材料である。炭素繊維は日本で発明され、国内3社で世界の約6割のシェアをもつ。「鉄より強く、アルミニウムより軽い」のが特徴で、いずれは金属の代替にという期待がかかる。だが、作るのにコストがかかる上に加工しにくいなどの難点があり、この半世紀余り、釣竿からゴルフクラブなどスポーツ用品、そして航空・宇宙分野へと少しずつ用途を広げてきた。10年前にはボーイング787の機体の半分に使われるところまできた。量産車の構造材として使われるようになれば、金属にかわる素材として炭素繊維がいよいよ本格的に使われることを意味する。もっとも、そのためには大幅なコストダウンなどまさに桁違いの技術が必要になる。名大を中心に産業界も加わったチームが挑戦しているのはそこだ。日本の車の将来のためにも負けられない戦い、という。

公開されたCFRPのシャシー(手前)とモデルとなったアルミ車(2017年 10月16日、名大NCC)


 10月半ばに行われた名大ナショナルコンポジットセンター(NCC)での発表は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を大型のプレス機に入れ、車のシャシー(車台)を1分で成形するのに成功したというものだった。熱で硬くなるタイプの樹脂を炭素繊維に混ぜる方法がすでに実用化されているが、固めるのに6分以上かかっていた。今回は、温度管理などが難しいが、時間を大幅に短縮できる、熱で軟らかくなるタイプの樹脂を使った。この方法で実際にシャシーを作ったのは世界で初めてという。モデルにしたのはアルミ製のスポーツカーで、もともとスチール製より約30%軽いが、45kgのシャシーをCFRPでは40kgと、さらに10%軽くすることができた。>>「名大ウォッチ」で続きを読む。


辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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