法学研究者がいなくなる?

  • 2017/12/28

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 ベトナムのハノイ法科大学でこの秋、日本語で日本法を学ぶ、名古屋大学日本法教育研究センターの10周年を祝う式典があった。希望者の多い人気コースだが、法学部の通常のカリキュラムと合わせて学ぶので学生にとっては負担も大きい。毎年200人以上の志願者の中から25人が選ばれ、卒業までこぎつけるのはそのうち10人前後と、入るのも出るのも狭き門である。これまでに71人が卒業し、22人が名大など日本の大学院に進んだほか、日本企業や大学、政府など様々な場所で日本とベトナムをつなぐ人材として活躍している。
 式典で祝辞を述べたレ・タン・ロン司法大臣は、センターができる前の英語コースで日本法を学んだ後、名大で博士号を取得した。自分の今があるのは名大で学んだおかげとしたうえで、ベトナムと日本の友好の架け橋となる人材が育ったとたたえた。式典には名大から松尾清一総長も出席、ハノイ法科大学長らとともに、今後のさらなる発展を誓った。


ベトナム日本法教育研究センター10周年の式典に参加した関係者(2017年11月15日、ハノイ法科大学)


名大法学部のアジア諸国での法整備支援や人材育成(http://www.meidaiwatch.iech.provost.nagoya-u.ac.jp/2017/02/post-1.html)、日本語による日本法教育(http://www.meidaiwatch.iech.provost.nagoya-u.ac.jp/2017/05/51.html)が着実に成果を上げていることを再確認する機会になったが、なんとも皮肉なことに、実はその本家である名大法学部での人材育成が危うい状況になっているらしいのだ。式典に参列した森島昭夫名誉教授によれば「研究者の育成システムは崩壊状態」という。アジアでの法整備支援を名大で最初に手がけ、法学部長も務めた民法学者だ。ベトナム側の期待もますます高まるなか、これからもその期待に応えていけるのか。帰国後、法学部を訪ねた。>>「名大ウォッチ」で続きを読む。


辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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