標準理論を超える新物理探索へ前進
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- 2018/03/22
KMI現象解析研究センター、重フレーバー素粒子物理学国際研究ユニット
飯嶋徹教授
新たに生まれ変わった、日本最大の粒子加速器SuperKEKBが、本格稼働を始めました。飯嶋徹教授が率いる名古屋大学の研究チームは、本加速器を用いたBell Ⅱ国際共同研究において、主導的な役割を担っています。本プロジェクトにより、標準理論を超える新物理の探索を目指します。
茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)で建設が進んでいたSuperKEKB加速器の運転がいよいよ始まりました。3月21日に、SuperKEKB加速器主リングへの電子ビームの直積が成功し、この加速器を使ったBelle II国際共同実験を主導している名古屋大学の素粒子研究者も、実験が新たな段階に入ったことに大興奮しています。
名古屋大学の研究者達は、SuperKEKB/Belle II プロジェクトの前身であるKEKB/Belle実験において、B中間子崩壊における粒子-反粒子対称性の破れを測定し、この破れが名古屋大学OBの小林-益川両博士による理論的予言と一致することを確かめました。この成果は素粒子の標準理論を確立する重要な結果であり、両氏の2008年ノーベル物理学賞受賞に大きく貢献しています。
しかしながら標準理論は、宇宙が物質でできていて反物質が見当たらないのはなぜか?や、暗黒物質の正体は何か?といった宇宙最大の謎に答えることはできません。こうした謎の解明には標準理論を超える新しい物理の発見が必要と考えられています。
SuperKEKB/Belle II プロジェクトでは、「重フレーバー素粒子」と呼ばれる b-クォーク、c-クォーク、およびタウ・レプトンの稀な反応過程を精密に調べることで、新物理の高感度探索が可能になります。
図2:世界のe+e-衝突型加速器のルミノシティ グラフ ©KEK
飯嶋徹教授(KMI現象解析研究センター長、および重フレーバー素粒子物理学国際研究ユニットリーダー)は、「この新しい実験アイデアの検討を始めてから15年以上かかってやっとここまで来たが、とてもワクワクしている。実験が始まれば、大学院生などの若手研究者が新しい現象を見つけ、基礎科学を発展させることができる。」と語っています。
飯嶋教授が率いる名古屋大学の研究チームは、「TOPカウンター」と呼ばれる新型粒子検出器の独自開発と建設・運転、KMの高性能コンピュータシステムによる大量のデータを処理手法の開発、新現象発見に向けたデータ解析など、プロジェクトの様々な側面で主導的な役割を担っています。
来月には、最初の電子-陽電子衝突が計画されています。
図3:Belle IIとSuperKEKB加速器、衝突点付近 ©KEK
- 参考:KEKのプレスリリース
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- “Belle II starts the Global Cosmic Run”、Gaz特任准教授、NU Research(英語)、2017年6月7日
- 飯嶋徹教授特別インタビュー(重フレーバー素粒子物理学国際研究ユニット)、NU Research(英語)、2016年11月18日
リンク
名古屋大学は、2014年に「研究大学強化促進事業」に採択され、世界的な研究拠点形成を目指す研究者たちを支援しています。「重フレーバー素粒子物理学国際研究ユニット」は、本事業において、2014年に最先端国際研究ユニットとして採択されました。