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「勇気ある知識人」とは?

  • 2018/04/23

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 名古屋大学の人材育成の目標は「勇気ある知識人」である。この春の卒業式と入学式でも、松尾清一総長が祝辞の中でこの言葉を取り上げ、学生たちを激励した。「自由闊達」とともにさまざまな場面で語られるのを耳にする。名古屋大学を特徴付ける言葉と言っていい。「勇気ある知識人」とはいったい何か、そして、どのようにして登場したのだろうか。


入学式で松尾総長は「名古屋大学は、勇気ある知識人に脱皮するために、チャンスをつかむ場であり、チャレンジする場でもある」と語りかけた。

 私が最初にこの言葉を知ったのは2016年2月、東日本大震災から5年になるのを機にした取材で減災連携研究センターの鈴木康弘教授を訪ねたときだった。インタビューのテーマは「科学者の責任」。甚大な被害を生じうるが、きわめてまれにしか起こらない「低頻度巨大災害」にどう備えるか、大震災が突きつけた課題に対し、科学者が果たすべき責任について尋ねた。鈴木さんは震災後、原子力規制委員会で原発敷地内の活断層調査に参加し、厳しい判断を下していた。その経験を踏まえ、「不都合な真実に目をつぶるな」と題したインタビュー記事の最後でこう語っている。
 「気がかりなのは、若手研究者が社会的な発言を避けがちなことです。批判されることはあっても、業績として評価されることがないのも一因でしょう。しかし、科学は社会の幸福のためにこそあるのですから、専門の殻に閉じこもらずに発言すべきです。大学や研究機関、学会は、社会が求める『勇気ある知識人』をいかに育てるか。精神論だけではなく、評価基準を確立するなど具体的な育成体制を整えることが求められます」
 この記事では触れなかったが、「勇気ある知識人」は、名大が全国の国立大学に先駆けて2000年に定めた学術憲章でうたわれた言葉だと聞いた。制定当時の松尾稔総長は鈴木さんの師でもあり、鈴木さんは以来、科学者の社会的な責任を意識して社会への発信を心がけてきたと話した。科学者の社会への発信の重要性を感じていた私にとっても、この言葉は強く印象に残った。

 名大にやってきて、さまざまな場面でさまざまな「勇気ある知識人」に再会した。松尾現総長は入学式で、勇気ある知識人とは「高度な専門知識や技術に加えて、社会貢献の高い志と幅広い視野、多様性を理解し、受け入れる広い心、そして物事を動かしてゆくリーダーシップ、などの資質を持ち、人類的な課題と向き合って果敢に挑む人材だと考えている」と語った。一方、学生の側でも、例えばこの春の卒業生の一人でベンチャーを起業した三野稜太さんは総長を囲む座談会で、「勇気ある知識人とは、1 番失敗している人なんじゃないかと思うんです。飛び込んで失敗する。その繰り返しで成長し、何でもできるようになる。僕の人生、失敗しかないです」と笑顔で話していた。
 「勇気ある知識人」は学内に広く浸透し、それぞれのイメージでとらえられているようだ。
 では、学術憲章にはどう書かれているのか。>>「名大ウォッチ」で続きを読む。


辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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