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異文化が交わる大学博物館

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  • 2018/06/05

国際機構

辻篤子特任教授(「名大ウォッチ」より転載)

 タイトルはパリコレならぬ「カニコレ'18」、副題は「カニのハサミは使いよう」とあって、中に入れば入館者がお気に入りのカニを選ぶ「カニ選挙」もある。名古屋大学博物館で開催中の特別展は遊び心満載だ。その中身はといえば、カニのハサミの形と機能の多様性、そして同時にそこに潜む普遍性を明らかにする先端研究の成果だ。

 博物館と聞くと、化石や動植物などの標本が並ぶ静かな空間が思い浮かぶ。博物館行きといえば、骨董品扱いと同義で古さの代名詞のようなものだ。だが、名大博物館の内側に入り込んで見ると、資料の収集という博物館本来の機能に加えて、実にダイナミックな知の空間が広がっていることに気づく。専任教員7人の小さな組織だが、人類の起源から海岸などに転がる謎の球体の正体、西洋タンポポまで、実に多様な研究が行われている。一見何のつながりもなさそうだが、専門の異なる研究者たちが日常的に交流することで思わぬつながりや展開があるのだという。カニコレの中にも謎の球体があった。異文化交流が博物館の研究の大きな特徴であり、博物館だからこそできた研究、と研究者たちは口を揃える。大学の中にあるから、必要な専門家や共同研究の相手、そして関心を持ってやってくる学生にも事欠かないのが強みだ。

 その成果を展示につなげることが学内の他の研究者と違う点だが、研究を大勢の人に見てもらえるのは喜びでもある。小粒でピリリ、ユニークな研究拠点である。

kanikore.jpgカニコレ'18展の入り口に立つ藤原慎一講師。ポスターでは、ファッションショーのランウェイをカニ歩きするのも観客もすべてカニだ。

 カニコレを担当するのは藤原慎一講師、動物の筋骨格系と機能の関係の専門家である。例えば、恐竜の骨の形から、歩き方や寝るときの姿勢などを推測する。カニの脚の先端が変化してできたハサミの研究もその一環で、身を食べた後のズワイガニも研究対象になるなど標本集めが容易だという利点がある。

 一部のカニは、ハサミで貝を砕いて口に運んで食べる。右側のハサミが大きい右利きに混じって左利きがいたり、強力なハサミの腕力派がいればハサミ先端の鋭い突起で貝をこじ開ける知能派もいて実に多彩だ。悲哀を感じさせるのは、シオマネキのオスだ。大きい方のハサミは口に届かず、もっぱらメスへの求愛の際に振り回して踊ったりケンカの時に相手をたたいたりするのに使われる。「メスはしっかり両方の脚を使って食べているのに、オスは片方だけで食べる。リスクもあるはずだが、そこまでしてメスの気を引きたいのか」と藤原さんも首を傾げる。どこか抜けているようでもあり、カニ選挙でシオマネキの個性に1票を投じてきた。

yoshida_sensei.jpg吉田英一教授と宮崎県都城市の約5000万年前の地層から見つかったコンクリーション。重さは40kgほどある。

 カニコレに登場していた謎の球体は、「コンクリーション」と呼ばれ、内部にカニの化石が入ったものが展示されていた。コンクリーションについては別室に展示があるとの案内があった。昨年開催された特別展「球状コンクリーションの謎」のミニ版が常設展となっている。その副題に「化石永久保存のメカニズム」とあるように、化石と関係が深い。
 担当するのは吉田英一教授だ...>>「名大ウォッチ」で続きを読む。

辻篤子(つじ あつこ):1976年東京大学教養学部教養学科科学史科学哲学分科卒業。79年朝日新聞社入社、科学部、アエラ発行室、アメリカ総局などで科学を中心とした報道に携わり、2004〜13年、論説委員として科学技術や医療分野の社説を担当。11〜12年には書評委員も務めた。2016年10月から名古屋大学国際機構特任教授。

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