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ハイライト論文

液晶と空気: 液晶材料の可能性を広げる新光配向技術の開発

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  • 2014/03/26

名古屋大学大学院工学研究科の関隆広教授を中心とした研究グループは、液晶分子の向きを光の照射でそろえる新手法を開発しました。この研究成果は2月18日付でNature Communicationsオンライン版に掲載されました。

テレビやコンピューターのディスプレイやメモリに用いられる液晶材料は固体と液体の中間状態にあり、外部からの刺激によって固体のような規則正しい方向に整列する性質を持ちます。これまで液晶分子を支える固体基板をこすることで溝をつくり、そこに分子膜を塗布することで分子の向きを制御する手法が一般的に用いられてきました。一方、光に反応する分子膜を基板に塗布し、基板側から液晶分子膜に偏光をあてることで分子を配向させる手法が1990年前後に発見され、最近では液晶ディスプレイの製造に用いられ始め、重要な産業技術となりつつあります (図1従来法を参照)。

今回関教授の研究グループは、一般的に液晶スクリーンに用いられ、その流動的性質から固体基板2枚に挟まれる必要がある低分子ではなく、固化した高分子を用いました。高分子では、2枚の固体基板の片方が不要なので、液晶分子を空気にさらすことになります。関教授はこの時光に反応する分子をもつ厚さ20ナノメートルの薄膜を空気界面側に設けて、外側の空気から液晶分子膜に光を当てることで分子を配向させることに成功しました(図1新手法を参照)。この手法は基板側に手を加える必要が一切ないため、基板材料への要件を大幅に減らすことができます。基板側から光を当てて配向させる場合、基板は光を通す透明性が求められますが、この新手法を用いれば濃色の物質や高い柔軟性を持つ材料シートなど様々な材料を基板とすることができ、多様なデザインのデバイスを開発することができます。また図2に見られるように、高分子膜をインクジェット印刷し、偏光による分子の配向を生かしてパスポートや紙幣等の偽造防止のような印刷に応用する期待も持てます。この研究成果は液晶材料やデバイスの用途と可能性を広げる手法として広く注目を集めています。

関隆広教授

関隆広教授は物質変化に魅力を感じて科学に興味を持ち、学生時代には東京工業大学 高分子工学科で高分子の研究に取り組みました。実験を通して誰も予想もしなかった事実を発見し、既存の知識に揺さぶりをかけることにやりがいを感じるそうです。常に実験結果を素直にとらえ、曇りのない目で解釈すること、一瞬のひらめきを大切にすることで、新たな発見を生み出し続けています。

今後の展望

液晶物質は分子みんなが足並みをそろえて動くことで機能を発揮します。今回の研究もそうした性質を使っています。生体組織の主要な部分は液晶物質や高分子物質でできています。これらはソフトマテリアルとも呼ばれていますが、こうした動く材料研究の究極の目標は生物が行っていることを人工的に作り出すことかもしれません。さまざまな角度からソフトマテリアルの可能性を探っていきたいと思います。

これから研究を始める人へ

研究はひとりで考えて作り出すもののように見えるかもしれませんが、多くの場合、人との出会いやコミュニケーションはとても大切で、それらを通じて新しい発想が得られていきます。自分ひとりでできることは小さなことに過ぎませんので。一方で矛盾するようですが、研究は個性です。世の中全般や他人が面白いと思うことと自分が面白いと思うことは違っていて当然です。ぜひ自分の感性を、勇気を持って磨いていってほしいと思います。



参考

研究成果情報
関隆広教授情報

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