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ハイライト論文

高齢化社会を元気に生きる: 血管内皮細胞老化防止で動脈硬化を予防

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  • 2014/03/25

名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学老年科学講座の林登志雄講師を中心とした研究グループは、肝臓X受容体(LXR)が抗細胞老化作用を持ち、糖尿病や動脈硬化を抑制すること、また抗糖尿病薬であるメトホルミンとの併用で副作用である脂肪肝の生成を除去できることを発見しました。この研究成果は2014年1月21日付でPNASに掲載されました。

日本の人口の高齢化は過去に例を見ないスピードで進んでいます。医療や研究には様々な患者さんのデータの蓄積が必要ですが、75歳以上の高齢者は人口の1割、病気の4割を占めるのに、データの収集は始まったばかりです。高齢者に適した治療を施し、老化防止を考える老年科学は、現在日本で最も必要とされている医療の一つです。高齢者には動脈硬化に起因する疾患が多いことから、血管の健康が高齢者の健康に非常に重要であると言えます(『ヒトは血管と共に老いる』といわれます)。血管には血管内皮細胞と呼ばれる一層の細胞があり、血管を広げたり血小板の凝集を抑える働きを持つ一酸化窒素(NO)を分泌したりします。この細胞が老化するとNOの分泌が減るため、血管が狭くなって各種の刺激に応じて広がる事ができなくなり、血流が低下すると共に動脈硬化を招きます。これまで血管の拡張性を維持するために、狭心症を示すような進行した動脈硬化血管に対してニトログリセリンなどの薬剤が用いられてきましたが、薬剤耐性の獲得により短期間で効力が失われ長期的な使用には適さない事が報告されてきました。そのため異なるアプローチで血管の健康を保つ手法の開発が待ち望まれていました。

林講師等は米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校臨床薬理学(イグナロ教授、1998年ノーベル医学生理学賞)等との共同研究で栄養液の糖濃度が高い事、即ち高齢者に急増する糖尿病のような状態が血管内皮細胞の老化を急速に進める事を見出しており、この内皮細胞老化/血管老化を防ぐ物質を特定するため、老化の原因となる糖分の濃度を通常の3-4倍に上げた血管内皮細胞に、様々な酵素やタンパク質を添加し反応を観察しました。その結果、血液中の脂質と糖質を肝臓で代謝させる機能を持つ肝臓X受容体(LXR)が細胞の老化を防ぐ作用を持ち、結果的にNOの分泌を促して動脈硬化を防ぐことを見出しました。LXRはこれまでも注目されてきたものの、副作用として脂肪肝を引き起こすことから治療に用いることは難しいと考えられてきました。この問題を解決するため、林講師らはLXRと既存薬の相互作用を研究し、米国ではメタボリック症候群の予防、治療薬としてサプリメントのように普遍的に用いられている抗糖尿病薬メトホルミンをLXRと併用することで副作用の予防が可能であることを発見し、ラット等の動物実験でも確認しました。この研究成果をもとに、今後はLXRとメトホルミンを併用した治療の臨床応用が期待されます。また、林講師はスイカに含まれるシトルリンを用いてNOの分泌を促す研究も進めており、産業と連携して一般に広く用いられる老化防止法の開発にも貢献しています。

林登志雄講師

林登志雄講師が研修医時代に配属された病院では、内科が様々な専門分野に分かれていました。研修中、様々な分野を定期的に回る中で、1度循環器科で診療した患者さん(多くはお年寄り)と別の機会に神経内科で出会う、ということが度々あったそうです。そのどちらも血管に起因する疾患(心筋梗塞と脳梗塞等)であったことから、高齢者に生じる様々な疾患を動脈硬化症など共通する基礎疾患を理解する事から総合的に患者さんを診ることができるのではないかと思うようになり、当時、日本の国立大では4番目に設置された名古屋大学老年科学講座を選びました。研究と診療を通して高齢者にあった治療をめざし、急速に進む高齢化社会を支える医療の進歩に貢献しています。

今後の展望

あらゆる病気の4割までが75歳以上の高齢者に認められます。また高齢者は一人で幾つもの病気を持っておられます。こういった現状を克服し、高齢になっても元気で活躍出来る事が,ご本人のみならず日本や,世界中で求められていると思います。こういった研究はまだ緒に就いたばかりですが,今後ますます発展させ、老年科のみならず全ての医師、更には全ての人々が老化及びそれに関連する疾患に前向きに対応して行けるとよいと思っています。

これから研究を始める人へ

日本は世界で最も早く高齢者の人口割合が高くなる超高齢社会を迎えつつありますが,これは欧州や中国、韓国等,世界各国が今後経験する現象です。高齢社会への対応を正面から学び解決法を考える事は医学に限らず、どの領域に進まれても必要だと思いますし、その成功は日本のみならず世界中に恩恵をもたらすと思います。また糖尿病のような生活習慣病が老化と密接に関連すると言う事実も今後の病気への対応を考える上で興味深く思っています。意欲を持って自らのテーマを探求して下さい。

参考

研究成果情報
林登志雄講師情報

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