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ハイライト論文

未来のエネルギーを守る: レアアース含有量を大幅に低減した鉄系高温超伝導体を開発

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  • 2013/12/02


名古屋大学大学院工学研究科片山尚幸助教を中心とした研究グループは、レアアース含有量を大幅に低減した新たな鉄系高温超伝導体112系を開発しました。この研究成果は11月6日付でJournal of the Physical Society of Japanオンライン版に掲載されました。

超伝導とは、ある温度以下で電気抵抗がゼロになる現象です。この温度は転移温度と呼ばれ、個々の超伝導体によって転移温度は異なります。電気抵抗がゼロになる性質から、送電時のエネルギーロスを回避しうる材料として非常に注目されてきました。しかしその転移温度は非常に低く、超伝導体の冷却に膨大なエネルギーを必要とするため、高いポテンシャルは秘めているものの広範な実用化は難しいと考えられてきました。2008年には日本で鉄系高温超伝導体1111系が発見され、-217度の転移温度を記録しました。鉄は様々な材料に加工しやすいため1111系の実用化が期待されましたが、材料に希少資源のレアアースを25%も必要とし、コスト面、資源制約面で問題を抱えていました。そのため低コストかつ持続可能な新しい鉄系高温超伝導体を作り出すことが待ち望まれてきました。

片山助教は鉄系高温超伝導体の超伝導層を構成するヒ素に注目し、これをレアアースの代替として用いることを考案しました。鉄系高温超伝導体において、レアアースは主に超伝導を担う鉄ヒ素層と鉄ヒ素層とをつなぐために必要とされてきました。研究グループはレアアースの代わりに化学結合したヒ素の鎖を用いて鉄ヒ素層と鉄ヒ素層とをつなぐ構造を作り出し、これまで25%必要とされてきたレアアースを2.5~5%まで低減することに成功しました。今回作り出された超伝導体の転移温度は-239度でしたが、試料の一部には-228度で超伝導化するものもあり、現在実用化されている超伝導体(一例としてMgB2: -234度)よりも高い転移温度を示しています。既存の超伝導体よりも構成元素が少なく加工がしやすい点、希少なレアアース含有量を大幅に削減し安価に制作できる点で、今回開発された112系は今後の実用化が大いに期待されています。

片山尚幸助教

片山尚幸助教はこれまで、超伝導や磁性など固体中の電子が生み出す多彩な物性の研究に携わってきました。超伝導研究には思い入れがあり、修士の学生のときに「水を入れると超伝導になる」風変りな結晶を発見したときの感動が研究者への道を志した原点になっているそうです。現在はX線回折という手法を使ってこうした物性の担い手である電子を「見る」研究を行っており、機能発現の舞台背景を明らかにすることを目指しています。

今後の展望

112系超伝導体を実用材料にするためには、転移温度をさらに向上させる必要があります。レアアースの代わりに用いたヒ素の鎖は化学的に柔軟な構造を持っており、上図のようなジグザグ鎖だけではなく、たとえば自動車のクランクシャフトのような複雑な形状も取りうると予想されます。鎖の形状や元素種の変化など、幾つかのパラメータを変化させて上手く組み合わせることで、日本発の実用超伝導材料の実現を目指して性能を向上させていきたいと考えています。

これから研究を始める人へ

研究は新しいものを産み出していく創造的な仕事です。まずは、自分の興味のある分野を見つけて飛び込んでみてください。自分のテーマに興味を持って積極的に取り組み、世界で誰も見たことのない新しい現象や機能をたくさん発見して、多くの感動を味わってほしいと思います。




参考

研究成果情報
片山尚幸助教情報

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