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ハイライト論文

ナノレベルの測定技術で材料開発の道を開く! 磁性の分布をナノメートル単位で測定する技術の実証に成功

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  • 2014/02/17
名古屋大学の超高圧電子顕微鏡

名古屋大学エコトピア科学研究所武藤俊介教授を中心とした国際研究グループは、物質の磁性の強さをナノレベルで精度の高い測定をすることに世界で初めて成功しました。1この研究成果は123日付でNature Communicationsオンライン版に掲載されました。

磁石は車や電化製品など様々なものに使われ、私たちの生活を支えています。より強い磁石を作ることができれば、磁石を必要とする製品をより小さく作ることができます。この実現には磁性の強さなど、原料物質の性質を正確に把握し、磁性の強いところを選択的に抽出する必要があります。従来この測定は、X線を物質に照射し、それに対する反応を調べることで行われてきました。これに対して電子を使ってさらに小さな場所の測定をすることが考え出されましたが、入射電子が物質内部で何度も原子と衝突して情報を失ってしまう多重散乱や、照射による物質表面のダメージ等が高い精度での測定を妨げてきました。

武藤教授の研究グループはこの問題を解決するため、超高圧走査透過型電子顕微鏡(UHV-STEM)を用いて電子を物質に入射し、二色性信号(EMCD)を測定しました。二色性信号とは物質に照射した電子が物質中の電子と衝突することで現れる正と負の信号であり、物質内の電子の自転(スピン)の向きと電子が物質中を動き回る速さ(角運動量といいます)に応じて変化する性質を持つため、この信号を測定することで原子ごとの磁性の強さの分布を知ることができます。武藤教授はウプサラ大学(スウェーデン)で行われた理論計算をもとに鉄薄膜試料のEMCD信号を多数測定し、統計的に解析しました。その結果、ナノメートル単位の精度で元素選択的に磁性を精度よく測定することに世界で初めて成功しました。超高圧電子顕微鏡は現在日本でしか作ることのできない装置であり、今回の成果は日本独自の成果であると言えます。今後は電子スピンの性質を高い空間分解能で測定し、ハードディスクや磁石材料など様々な製品の機能向上につなげることが期待されています。

1. 文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究、同若手研究A、文部科学省「ナノテクノロジープラットフォーム」及びスウェーデン政府の国際共同研究・高等教育基金(STINT)の支援を受け実施。

武藤俊介教授

武藤俊介教授は世の中の成り立ちに興味を持ち、それを説明する物理の原理を求めて研究者の道を志しました。様々な場所で様々なテーマの研究に真摯に取り組み、材料のミクロな性質の解明を続けてきました。現在エコトピア科学研究所にて、電子顕微鏡を用いた測定を通してナノ材料の開発に取り組んでいます。

今後の展望

今回の成果は、日本独自の技術である超高圧電子顕微鏡に新たな応用範囲を拓くだけでなく、実用材料開発に対しても大きな貢献をすることが期待されます。現在新しい測定技術にさらに改良を加え、磁性の強さをナノメートルの分解能で場所ごとに色分けして表すようなスピンマイクロスコピーへと発展させることを目指しています。

これから研究を始める人へ

自分の頭で考え、自分の手足を使って未知の分野の創造に挑戦するのが研究の醍醐味です。しかしその前にこれまで先人が築いてきた基本をきちんと身につけることが重要です。大学に入るまでに習う科目で不必要な科目というのはありません。たとえ苦手科目であっても嫌がらずにこつこつ努力していると、周りの人たちが必ず助けてくれます。どんなことでもそうして長い時間が経つとときっと夢がかないます。




参考

研究成果情報
武藤俊介教授情報

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