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ハイライト論文

脳が正常に作られるしくみ

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  • 2013/11/06

名古屋大学大学院医学系研究科の岡本麻友美特任助教を中心とした研究グループは、脳の様々な細胞を生み出す神経幹細胞の細長い形状が、脳を正常に組み立てるために重要であることを発見しました。(※1)この研究成果は9月22日付でNature Neuroscienceオンライン版に掲載されました。

神経幹細胞は脳の壁の内面(脳室側)で分裂し、神経細胞(ニューロン)を生み出します。ニューロンは脳の壁の外面(頭蓋骨側)に移動して整列し、層構造をつくって神経回路を築きます。しかしこのニューロンの層構造が乱れた場合、神経回路の構造が乱れ、先天性の大脳形成異常を引き起こすと考えられています。この異常には、ニューロンの移動障害により説明されるものがあり、また原因となる遺伝子の変異もいくつかわかっています。これらの理由に加え、神経幹細胞が本来ニューロンだけが存在する場所に入り込んでしまい、そこで分裂をしてニューロンをでたらめにばらまいてしまうというタイプのニューロンの配置異常も知られています。しかし、なぜこのようなことが起きるのか、そのメカニズムはわかっていませんでした。

岡本特任助教は神経幹細胞が細長い形をしていることに注目し、この形状が幹細胞の核移動を効率的に行い、正常な組織構造を作るカギを握っているのではないかと考えました。研究グループは発生初期のマウスの神経幹細胞の構造を短くさせ、核の動きを観察しました。その結果、短くなってしまった神経幹細胞は脳壁の内側から外側へ向かう核移動をすることができずに内側で混雑した状態になり、その後細胞ごと外側へ無秩序に離脱してしまうことがわかりました。また、逃げ出した先(本来ニューロンが層構造を作る脳壁の外面)で分裂してニューロンの配置パターンを乱し、結果として大脳組織の構造を乱すことが明らかになりました。また、長細い形状を持つ正常な神経幹細胞が分裂した場合、片方の娘細胞は長細い形状を受け継ぎ、もう片方の娘細胞は短い形状のままであること、そして長い形状を持つ娘細胞の方がもうひとつの娘細胞よりも先に動き出すため、ぶつかり合うことなく移動することができ、細胞が過密状態にならないことがわかりました。この研究成果は、先天性脳形成不全の病因解明に貢献すること、また今回用いられた解析手法によって、生物種を超えて大脳の形成の研究に広く示唆を与えることが期待されています。

※1:文部科学省の新学術領域「動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成」による、学際的な国内共同研究として推進。

岡本麻友美特任助教

たったひとつの細胞から、生物の複雑なかたちが作られることの不思議に魅了され、そのメカニズムを明らかにするために発生生物学の研究を始めました。なかでも発生過程の大脳は、多くの細胞たちが非常にダイナミックな動きをしており、最終的には精巧な大人の脳をつくりだします。このような細胞の集まりが、どのようにうまく調節されて、細胞社会を維持・発展させていくのか、その仕組みを明らかにしたいと考えています。

今後の展望

細胞ひとつひとつ、そしてそれら全体の動きをつぶさに観察して、そこから見えてくる"形作りの巧妙さ"を学びたいです。

これから研究を始める人へ

何かに対して、"不思議だ"、"知りたい"、"やってみたい"と思ったときがチャンスです。その気持ちを大切に、まずは挑戦してみてください。

参考

研究成果情報

岡本麻友美特任助教

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