汎発性膿疱性乾癬の病因を特定: 遺伝子検査で的確な診断が可能に

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  • 2013/06/06

名古屋大学大学院医学系研究科の杉浦一充准教授と秋山真志教授を中心とした研究チームは1、汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)の8割以上の病因が遺伝性であることを解明しました。この研究成果は5月22日付で米国研究皮膚科学会と欧州皮膚科学会の共同公式誌Journal of Investigative Dermatologyオンライン版に掲載されました。

汎発性膿疱性乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患であり、原因がわからず治療法が確立されていない、症例数が少ない難病です。小児期と30歳代に発症することが多く、急激な発熱と共に全身に白い膿をもつ赤い発疹ができ、生涯再発を繰り返します。しばしば合併症を引き起こし、死に至ることもあります。2011年に同症状の特殊系である家族性汎発性膿疱性乾癬の原因が、インターロイキン36 (IL-36)受容体阻害因子欠損によるものであることがチュニジアで示されましたが、それ以外の膿疱性乾癬はこれまで別の原因をもつと考えられてきました。

研究チームは汎発性膿疱性乾癬を発症した患者を対象に、IL-36受容体阻害因子をコードする遺伝子の変異を解析しました。IL-36は炎症を誘発するタンパクで、受容体と結びつくことで活性化し、症状を引き起こします。通常、阻害因子によりIL-36と受容体の結合は阻まれますが、これが欠損した場合炎症が引き起こされます。解析の結果、同病の患者の8割に、遺伝子の変異による阻害因子の欠損が認められ、IL-36が症状を引き起こしていることが特定されました。今回の研究で同病の原因が解明されたことを受け、今後は新たな治療法が世界的な規模で進められていくことが予想されます。

1. 国内11施設との共同研究

杉浦一充准教授

杉浦准教授は、表皮角化細胞生物学と遺伝性皮膚疾患の研究に取り組まれてきました2011年にチュニジアで家族性汎発性膿疱性乾癬の病因が特定されたことに衝撃を受け、汎発性膿疱性乾癬の病因も遺伝性ではないかと考え、研究を始めました。今回の研究成果は、名大病院と全国各地の病院の患者さんたちの協力で生まれました。患者さんたちに役立つ、臨床に根差した研究を行っています。

今後の展望

今後は今回の研究で用いた遺伝子診断をすることで、汎発性膿疱性乾癬の的確な診断が行えるようにすることを短期的目標としています。皮膚科の病気には、通常の診療では診断できないものもあります。そのような病気の病因を遺伝学的手法を用いて解明していきたいと思います。

これから研究をする人へ一言

今回の成果は患者さんの遺伝子を調べることで得られました。皮膚科では研究成果を患者さんに直に還元することができます。臨床も研究も全力で取り組みたいのであれば、皮膚科は最適な環境です。





参考

研究成果情報

汎発性膿疱性乾癬について

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