肥満は遺伝で決まる! 肥満抑制遺伝子の発見

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  • 2013/08/07

ボストン小児病院提供

名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍病理学の浅井真人特任講師を中心とした研究グループは、マウスを使った研究らMRAP2という遺伝子が肥満に深く関連していることを発見しました。この研究成果は719日付でScienceに掲載されました。国内外から注目され、今後の進展が非常に期待されています。

研究グループはMRAP2が欠損したマウス(ノックアウトマウス)と野生型のマウスをまず自由にエサを食べさせる条件で飼育し、変化を観察しました。その結果、ノックアウトマウスは5ヶ月齢で野生型のマウスの2倍以上の体重を持つようになることがわかりました(右写真の天秤ばかり。右の皿に2匹載っているのが野生型、左の皿に1匹載っているのがノックアウトマウス)。次に野生型のマウスが食べた分に制限してノックアウトマウスにエサを与えることにしましたが、それでもノックアウトマウスは野生型より肥満しました。これにより、全く同じものを食べていても肥満を引き起こす遺伝子型があることが明らかになりました。

今回の研究により食べ過ぎと運動不足は肥満に必須な要素ではないことが解明されました。この肥満抑制遺伝子MRAP2はヒトにも存在するため、人間の肥満にもこの遺伝子の変異が関わっている可能性があります。今後はMRAP2変異が現代人の肥満にどのように影響を与えているかの解明が待たれます。

浅井真人特任講師

浅井真人特任講師は、アメリカのハーバード大学小児科で4年間研究活動を行い、今回の研究成果につながるMRAP2遺伝子に変異を持つマウスを作製しました。世界をリードする研究者とともに過ごし、世界トップレベルの医学者たちとの人脈を得たのはもちろんですが、日常生活でもアメリカに住む普通の人々との深く長いつきあいを体験して広い視野を身に着けました。現在愛知三の丸病院にて医師として患者さんと向き合いながら、名古屋大学医学研究科腫瘍病理学で研究を行っています。常に自分の興味のあることについて、のびのびと探究することをモットーにしています。

今後の展望

肥満に関する研究に留まらず、今後は脳に関連するもっと幅広い病気について研究をしていきます。常に新鮮な気持ちで、その時に興味のあることを研究していきたいと思います。

これから研究をする人へ

日本の高校生、大学生の学力は海外の学生に負けません。小さな殻に閉じこもらずに、広い世界を経験して多様な価値観を学んでください。「人間が自分を人間と思っていることも一つの憑依だ」とフランスの哲人ジャックラカンの言葉を味わうこと、名誉や金や昇進の虚無を早く悟ること、カートヴォネガットジュニア「タイタンの妖女Sirens of Titan」を読むこと、そしてマウスのように直感と嗅覚で生きること!



参考

研究成果情報

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