1. ホーム
  2. 一般の方へ
  3. NU Research
  4. ハイライト論文
  5. 気孔を広げて植物を元気に: 遺伝子組み換えで植物増産に成功

ハイライト論文

気孔を広げて植物を元気に: 遺伝子組み換えで植物増産に成功

  • Read in English
  • 2014/04/07

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の木下俊則教授、ワンイン博士研究員(現在名古屋大学Young Leaders Cultivationプログラム 特任助教)を中心とした研究グループは、遺伝子組み換えによって植物の気孔を通常より大きく開かせ、植物の成長を促進することに成功しました。この研究成果は12月23日付でPNASオンライン版に掲載されました。食糧難や地球温暖化など様々な重要問題解決につながる成果として、世界中から注目を集めています。

植物は光合成によりエネルギーを生み出し成長します。光合成には水、光、二酸化炭素が必要であり、葉の表面にある気孔でガスの交換を行っています。気孔をより大きく開くことができれば、二酸化炭素の吸収量を増やすことができ、光合成を活性化、また植物の成長を促進することができると考えられます。しかしこれまで気孔を人工的に大きく開かせる技術は開発されていませんでした。

これまでの研究で、気孔が持つ光受容体(フォトトロピン)、プロトンポンプ、カリウムチャンネルが気孔を開かせるために必要な要素であることが分かってきました。そこで木下教授の研究グループは、遺伝子組み換えによってこれらの量を増やしたシロイヌナズナを作り出し、気孔の様子と植物の成長を観察しました。光受容体とカリウムチャンネルは、気孔の開きに影響を与えませんでしたが、プロトンポンプ量を増やしたシロイヌナズナの気孔の開口は野生種に比べて25%大きくなり、CO2吸収量は約15%上昇、それに伴い植物の生産量は1.4~1.6倍に増加しました。今回の成果には遺伝子組み換えが必須でしたが、木下教授らは化合物によってプロトンポンプを活性化し、植物の生産を向上させる手法の開発にも取り組んでいます。同グループの研究は、今後食糧増産や環境問題改善に貢献することが期待されています。


木下俊則教授

木下俊則教授は幼少より生き物に親しみ、生き物の採集や飼育、栽培を楽しんできました。夏の暑さにも、冬の寒さにも負けずにけなげに生きる植物に魅力を感じたそうです。大学4年次に研究室に配属され、未知の領域に教員と学生が対等な立場で挑戦することにやりがいを感じ、研究者の道を選びました。現在トランスフォーマティブ生命分子研究所のPrincipal Investigatorとして、様々な分野の研究者と協力しながら植物に変革をもたらすような分子の研究を行っています。

今後の展望

今回の成果は、植物を通じた共通のメカニズムを利用しており、様々な植物種への応用が期待されます。一方で、遺伝子組換えを利用した技術であるため、様々な植物種に応用する際に大きな障壁となる可能性があります。そこで現在、所属する研究所において、プロトンポンプを効果的に活性化する化合物の開発を進めており、遺伝子組換えに頼らない方法で植物の生産量増加にチャレンジしたいと思っています。

これから研究を始める人へ

研究には、多くの知識や技術がもちろん必要ですが、研究に対してドキドキ・ワクワクすることが一番大切と思っています。皆さんが一番ドキドキ・ワクワクすることは何でしょうか?私の場合は、植物の研究でした。若い方には、いろんなことにチャレンジし、自分の興味を幅広く追求してもらいたいです。

ワンイン特任助教

ワンイン特任助教は中国の北京大学、日本の東京大学や名古屋大学など様々な研究機関で植物を生理・生態学的アプローチにより研究してきました。以前木下教授が発表した気孔の青色光応答に関する論文を読んで興味を持ち、気孔と光合成の関係の生理的な研究を行いました。そして、2011年から木下教授のグループに博士研究員として加わりました。2014年3月より、名古屋大学若手育成プログラム「Young Leaders Cultivation」の特任助教として研究に取り組むとともに、学生への教育指導にも携わっています。

今後の展望

気孔は陸上植物の蒸散や光合成に必要な二酸化炭素の取り込みなど重要な役割を果たしています。気孔の開閉は植物の個体成長のみならず、グローバルな水循環や炭素循環へも影響します。今後、気孔開閉のメカニズムの全面的な解明を目指し、将来、人為的に気孔開閉を制御することで、食糧生産やグローバル環境保全に貢献したいです。

これから研究を始める人へ

孔子が言われた「知之者不如好之者。好之者不如楽之者。」(之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者に如かず。)研究に対する興味と楽しさは、最大の原動力です。自分の好きな研究を行うことができれば、道はどんなに険しくとも、笑いながら歩けると思います。


参考

研究成果情報
木下俊則教授情報
ワンイン特任助教情報

お問い合わせ

このページの先頭へ