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ハイライト論文

シンプルな花粉管制御法:遺伝子組み換えに頼らない食料増産に向けて

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  • 2014/04/08
めしべの中を伸びる花粉管(左)とS化オリゴを取り込むことで伸長が阻害され、まるで根のように枝分かれしてしまった花粉管(右)

名古屋大学大学院理学研究科の水多陽子研究員は、遺伝子組み換えを使わない簡単な花粉管の遺伝子制御法を開発しました。1 この研究成果は2014年3月18日にPlant Journalオンライン版に掲載されました。

植物のめしべに花粉が付くと、花粉から花粉管と呼ばれる精細胞の通り道がめしべ内部の胚珠(受精すると種子になる部分)へと伸びていきます。花粉管伸長に関わる遺伝子の研究は、植物の繁殖促進や駆除に役立つと期待されています。これまでホスホロチオエート化(S化)オリゴを使った遺伝子抑制法は報告されていましたが、S化オリゴを花粉に取り込ませる過程で高価で毒性のある脂質(リポフェクション試薬)が必要とされ、食用植物へ利用する際に、花粉管への毒性や費用・手間などが課題とされてきました。

今回、水多研究員は花粉管の伸長に関わる3種類の遺伝子をそれぞれ抑える働きを持つS化オリゴを作成し、遺伝子の発現を抑える適切な濃度を割り出しました。この濃度のS化オリゴを培地に加えて花粉に取り込ませる際、水多研究員はこれまで必要とされてきた脂質を使わず、S化オリゴのみを培地にそのまま加えるだけで花粉に取り込ませることに成功しました。このS化オリゴを取り込んだ花粉管は、めしべの上で伸長が著しく阻害されました。今回の研究成果では花粉管の伸長を促進する遺伝子を阻害しましたが、伸長に悪影響を及ぼす遺伝子を標的にすることも可能です。そのため、本手法は将来的に花粉管の伸長を促し新しい植物をつくるなど、食料の増産に向けて農業分野で応用されるかもしれません。また、花粉へのS化オリゴの取り込みを大幅に簡略化した今回の手法は、今後植物分野の様々な実験に用いられ、研究の効率化に貢献することが期待されています。

1. 戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「東山ライブホロニクスプロジェクト」(研究総括: 東山哲也 名古屋大学WPIトランスフォーマティブ生命分子研究所 教授)の一環。

水多陽子 研究員

水多陽子研究員は幼いころから植物に興味を持ち、様々な研究機関で多様なテーマに取り組んできました。一つの場所に留まらず、常に新しい場所で新しいテーマに挑戦し続けたことが視野を広めるきっかけとなりました。絵や写真など芸術にも興味を持ち、芸術分野で磨いた感性を研究のデータや図の表現に生かしているそうです。現在、戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「東山ライブホロニクスプロジェクト」の研究員として植物の研究に励むとともに、研究成果を一般の方々から見てもわかりやすく紹介することにも力を注いでいます。

今後の展望

生物が生きていくには、様々な遺伝子が関わっています。しかし、すべての遺伝子の働きが解明されたわけではなく、まだ分からないことだらけです。今回の方法をさらに発展させ、将来、花粉管の遺伝子の働きを誰でも手軽に調べることができ、農業や育種の分野にも応用できれば、と考えています。

これから研究を始める人へ

「研究」って難しそう!と思っている方もいらっしゃるかもしれません。けれど、興味を持っていることなら色々あるのではないでしょうか。面白そうな現象を、パズルを解くようにひとつずつ解明し、誰も知らない真実を発見していけるのが研究の醍醐味です。ぜひ面白い研究を見つけ、聞いた人も楽しくなるような研究を育てていって欲しいと思います。


参考

研究成果情報
水多陽子研究員情報

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