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ハイライト論文

反芳香族化合物の新たな可能性:ノルコロール蓄電池の作成に成功

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  • 2014/04/21

名古屋大学 工学研究科の忍久保洋教授、辛知映特任准教授、理学研究科の吉川浩史助教を中心とした研究グループは、反芳香族化合物 ノルコロールを使って蓄電池を作ることに成功しました。この研究成果は2月19日付でAngewandte Chemie International Editionオンライン版に注目論文として掲載されました。

電池を電気回路に接続すると負極(マイナス極)から電子を放出し、正極(プラス極)で電子を受け取ることによって電流が流れます。この負極・正極を構成し、電子の授受を担う活物質の性能はエネルギー蓄積量や持久性など2次電池(蓄電池)の性能に大きく影響します。現在は、金属酸化物など無機化合物が活物質として用いられていますが、重金属を使わない軽量な電池を目指して有機化合物を用いる研究が行われています。

忍久保教授らの研究グループは、2012年に困難とされてきた反芳香族有機化合物 ノルコロールの効率的な合成に成功しました。今回同グループは、合成したノルコロールを正極に、金属リチウムを負極に用いた二次電池を作成し、従来のリチウム電池を超える蓄電容量を実現しました。さらに、正極・負極両方にノルコロールを利用したリチウムフリーの蓄電池を作成することにも成功しました。反芳香族化合物は不安定で合成しにくいことからこれまで応用が難しいと考えられてきました。この研究成果は反芳香族化合物の可能性を大きく広げるものであり、今後は有機化学分野だけでなく、広く材料科学分野にも影響を与えると期待されています。

忍久保洋教授

忍久保洋教授は幼少時に見た教育番組で、化学反応により物質の色が変化する様子に心を奪われ化学に興味を持ちました。初めは超電導に興味を持っていましたが、有機化学を専門とする恩師に出会い、有機化学の道を選びました。芸術や料理と似て、有機合成では条件を変え工夫することによって全く違うものができることに面白さを感じるそうです。既成概念にとらわれず、日々の実験を通して誰も想像しなかった新たな分子を生み出し続けています。

今後の展望

応用を直接目指して研究している訳ではなく、誰も作ったことがないオリジナルな分子を合成するのを目指して研究しています。ノルコロール以外にも美しい構造をもった新しい分子を合成したいと考えています。また、ノルコロールにはまだまだ秘められた性質があると考えており、電池以外にも応用の可能性を見つけたいと思っています。

これから研究を始める人へ

科学を学ぶことによって、様々な性質をもつ世界初の"自分の分子"を創るという研究に携わることができます。研究は苦労の連続ですが、新しい分子を自分たちの作品として創りあげる大きな喜びがあります。また、このような研究は単に面白いだけではなく、環境問題・エネルギー問題のような人類にとって重要な問題を解決する手がかりになるような大きなインパクトをもつ物質につながる可能性もあるのです。


辛知映特任准教授

辛知映特任准教授は、韓国、日本、カナダの様々な機関で研究をしてきました。大学学士課程では物理化学、修士課程では無機化学、博士課程では有機化学を学びましたが、多様な分子を合成し、自由自在に応用できる有機化学を最終的に選びました。様々な国で研究する中で苦労をしつつも恩師や友人に励まされ、多様な価値観を学ぶとともに視野を広げました。彫刻や絵画などにも造詣が深く、芸術分野で磨いた感性を新たな分子構造の創造に生かしているそうです。

今後の展望

新しい化合物を合成しその化学的特性を理解していくのは楽しいことです。私達が合成したノルコロールは隠れた様々な性質を持つ特別な化合物です。想像以上の能力をもった未知の化合物はまだまだたくさん存在するはずです。それらを探しながらその特性に合わせた応用も開発していきたいと思います。

これから研究を始める人へ

自分のイメージ通りに物事を進めるだけではなく、新しい自分や物を創造する楽しさ、そして予想外なものを明らかにしていくことの重要さを学んでいったらどうでしょうか。また、現在自分ができることに愛情や根性を持つことも大切です。


吉川浩史助教

吉川浩史助教は我々の身の回りに存在する有機材料に興味を持ち、新たな物質を作り出すことを志して研究の道を選びました。多くの失敗の後、思いがけない結果を得た時の達成感に研究の醍醐味を感じているそうです。現在は炭素材料に興味を持ち、イオン透過性の高い高機能炭素材料を作り出すことを目指して日々研究をしています。大学で若い学生たちの新鮮な感性に刺激を受けながら、新たな機能性物質の合成とその応用に取り組んでいます。

今後の展望

エネルギー問題は化学者にとって切っても切り離せない学問領域になりつつあります。今回の研究を足掛かりに、より様々な蓄電材料の創製と開拓を進めていきたいと思っています。また、電極だけでなく様々な用途への応用が期待される高機能炭素材料について、その大量合成法の探索から新たな展開を見出したいです。結果として、高性能蓄電材料へのフィードバックになると思っています。

これから研究を始める人へ

研究にはその人の人間性や感性が色濃く反映されます。若い間は、文学、歴史、哲学、芸術など、理系科目以外の勉強にも力を入れるのがよいでしょう。知識を養うとともに、感性を磨いてください。また、良い研究をするには心と体が健康かつタフであることが必須です。若いうちに心と体を鍛えてください。物質科学にはまだまだ知られていないことがたくさんあります。皆さんの参入を待っています。


参考

研究成果情報

名古屋大学プレスリリース
Angewandte Chemie International Edition

忍久保洋教授情報

名古屋大学教員データベース
忍久保教授 研究室

辛知映特任准教授情報

名古屋大学教員データベース
名古屋大学大学院理学研究科

吉川浩史助教情報

名古屋大学教員データベース
分子機能化学研究室

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