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ハイライト論文

メダカの色と模様: 色素細胞の分化メカニズムを解明

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  • 2014/06/17

名古屋大学 生物機能開発利用研究センターの橋本寿史助教、長尾勇佑研究員を中心とした研究グループは、色素細胞の元となる細胞(幹細胞)が黄色素細胞と白色素細胞に分かれるメカニズムを解明しました。この研究成果はPNASおよびPLoS Geneticsに掲載されました。

生物の体色は色素細胞によって決まります。これまで色素細胞のうち、哺乳類を含む脊椎動物が共通して持つ黒色素細胞が幹細胞から生み出される仕組みは比較的よくわかっていましたが、それ以外の色素細胞(黄色素細胞、白色素細胞、虹色素細胞)がどのように作られるかはわかっていませんでした。

名古屋大学は60年以上にわたって主に野外で採集したメダカの様々な変異体を維持・保存し、それらを用いて生命科学研究を行ってきました。今回橋本助教の研究グル―プは、基礎生物学研究所の成瀬清准教授のグループとの共同研究で、黄色素細胞と白色素細胞の両方が失われた変異体を解析し、pax7aという遺伝子が壊れていることを発見しました。これにより、黄色素細胞と白色素細胞を作り出すためには発生初期にpax7a遺伝子が必要であることがわかりました。さらに同グループは、黄色素細胞を持たず、白色素細胞を多く持つ変異体を解析したところ、sox5という遺伝子が壊れていることを発見しました。したがって、sox5が働くと幹細胞は黄色素細胞となり、働かないと白色素細胞となることがわかりました。この研究成果は色素細胞に限らず、様々な細胞が分化する仕組みの解明につながることが期待されています。

橋本寿史助教

橋本寿史助教は研究成果が人々の生活に直接資するような応用研究をしたいと思い、農学部を選びました。水産系の研究室に入り、食べられる魚を扱っていましたが、中でもヒラメは体形がおもしろく、どのようにして左右非対称な体ができあがるのかを研究したいと思うようになり、発生や形態形成の研究を始めました。名古屋大学着任後は「食べられない」メダカを材料にしています。現在名古屋大学生物機能開発利用研究センターで、名古屋大学オリジナルのメダカ変異体を使えることに感謝しつつ、細胞分化メカニズムの解明や色素細胞の進化的多様性の理解を目指して研究を続けています。

今後の展望

色素細胞が作る体色や模様は、配偶者選択をはじめ、様々な個体間コミュニケーションに重要な役割を担っていると言われます。色素細胞の種類が多い魚類では特に、コミュニケーションの手段として種々の色素細胞を使い分けている可能性があります。動物の行動における体色の役割や体色の進化に照らして、幹細胞から複数の異なる色素細胞を作る発生のメカニズムを理解することで、より広く動物の持つ「色」の生物学的意義を明らかにできると期待しています。

これから研究を始める人へ

他人とは少し違った視点でモノを見て、それまで知られていなかった新しい事実を見つけたとき、「このことは自分しか知らない」とほくそ笑む喜びと、その事実を世に知らしめて「おーっ」と人を驚かせる喜びは、それらの過程にある努力と忍耐を惜しまない人であれば誰にでも体験できるチャンスがあると信じています(残念ながら、私自身は未だこの二つの喜びを究極には味わったことがありませんが、まだあきらめてはいません)。自分自身の喜びだけでなく世のため人のためになる研究でそれができればさらにいいですね。


参考

研究成果情報

名古屋大学プレスリリース
PNAS
PLoS Genetics

橋本寿史助教情報

名古屋大学教員データベース
動物器官機能研究分野

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