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ハイライト論文

サルはズルをした人を見抜く

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  • 2014/06/26

名古屋大学大学院情報科学研究科の川合伸幸准教授を中心とした研究グループは、脳が小さく記憶力も低い小型のサル、マーモセットが高い社会的知性を持つことを明らかにしました。この研究成果は5月21日付でBiology Lettersに掲載されました。

ヒトは複雑な事柄を理解する高い知性を持ち、自分と他者との関係や他者間の関係を理解することができます。このような"社会的知性"が獲得されたのは、ヒトが持つ大きな脳が要因か、社会の中で進化する過程で徐々に得られたものかはこれまでわかっていませんでした。

川合准教授の研究グループは、マーモセットに2人の人間が食べ物を交換し合う演技(互恵的関係:互いに相手に利益を与える関係)と、どちらか一方は食べ物を渡すもののもう一方は渡すことを拒否する演技(非互恵的関係)を見せました。演技を見てから5秒後に2人の演技者から食べ物を差し出されたとき、マーモセットは互恵的関係を見た後には2人の演技者から同じ割合で食べ物を受け取った一方で、非互恵的演技を見た後には食べ物を独り占めした演技者を避ける傾向を見せました。これはズルをする人とは協力関係を築かないようにするためと考えられます。したがって、マーモセットは自分に関わりのない第3者間のやり取りを理解し、その関係を敏感に感じ取っていることが明らかになりました。マーモセットのような小さな脳を持つ動物でも高い社会認知能力を持つことを示した今回の研究成果は、ヒトの社会性が社会の中で進化する過程ではぐくまれてきたことを示唆しました。この研究成果はヒトの心がどのように形作られてきたか等、ヒトへの理解を深めることにつながります。また、この研究で用いられ、社会的知性が確認されたマーモセットは遺伝子改変が可能で繁殖も比較的容易なことから、今後はモデル動物として神経科学研究の進展に資することが期待されています。

川合伸幸准教授

川合伸幸准教授は、チンパンジーやマーモセットを始めとする霊長類や、無脊椎動物(ザリガニ)など様々な動物を用いて認知、学習、記憶、注意、進化に関する研究をしています。中学生の頃から生命や精神について強く関心を持つようになり、心理学科のある大学を選んで受験したそうです。様々な分野の研究者と交流して常に自らの研究を相対化しながら、どのような心的過程が「ヒトをヒト足らしめているか」を解明することを目指して研究を続けています。近年は、感情の働きを脳や身体のさまざまな測定を通じて調べています。文部科学大臣表彰 若手科学者賞や日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞など多数の表彰を受け、広く注目を集めています。

今後の展望

ヒトの本性とはどのようなものでしょうか?自分を犠牲にして他人の命を助ける人もいれば、わずかな金銭やちょっとしたことで簡単に他人を殺してしまう人もいます。性善説と性悪説という両極端の考えがありますが、ヒトとはどのような生き物なのか、実験や社会の出来事を通じて、より深く理解したいと考えています。

これから研究を始める人へ

「自分って何だろう?」と考えたことはありませんか?心理学はそのようなことを調べる学問です。しかし、自分のことばかり考えていても、自分がどのような存在かはわかりません。他の人と比べてみて、はじめてわかってくることがあります(あなたが子どもなら大人と比べてみるとか、女性なら男性と比べてみるとか)。私がしている研究は、ヒトの仲間であるサルとの比較を通して「ヒトという生き物」はどのような存在であるかを知ろうとするものです。「自分とは何か」という問いに自分なりの答えを見つける作業は楽しいものです。

参考

研究成果情報

名古屋大学プレスリリース
Biology Letters

川合伸幸准教授情報

名古屋大学教員データベース
川合准教授研究室 (比較認知科学)
ERATO情動情報プロジェクト

お問い合わせ

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