日本ジュニア数学コンクール設立趣意書 (1997年6月)

日本数学コンクールジュニア版 趣意書

今の学校教育の数学は、受験を意識しすぎるあまり、「型にはまりすぎてしまった」きらいがあります。
数学が本来もっていなければならない「考える力」や「創造性」はどこかに置き去りにしているようにも見えるのです。そのためか、「数学は(受験以外では?)役に立たない」、「数学は暗記物だ」に始まって「(センターテストでは?)数学よりコンピューターの方がましだ」とさえ言われています。

このような状況に、我々は我慢ができませんでした。
本来の数学
=「考える力」や「創造性」を養う数学・未来を拓く素晴らしい数学=
に戻りたかったのです。それで、1990年、少々の悪口は覚悟の上で、高校生向けの数学コンクールを始めたのです。

宇宙技術なんかを西欧先進諸国から学んでばかりいた時代ならともかく、今の日本は「何ができるか」と世界から問われている時代であり、それに答えを出さねばならない時代です。
 すこし身の回りを見回すと、我々は実に多くの不思議に取り巻かれていることに気づきます。数学コンクールにも出題しましたが、水の中に一滴落とすと、たちまちドーナッツ型に変わって沈んでいくミルクや、風呂敷に包んで振り回すだけで、きれいにそろうコイン等、数えればきりがありません。これらの謎のそれぞれが、だれかが解き明かしてくれるのを待っているのです。

数学コンクールのねらいは、
 「不思議なものを不思議だと思う心」
 「それを何とかしてやろうと考える力」
 を日頃から大切にすることです。

これらの、未来を背負って行くべき「心」や「力」が最近では、子供から大人になるにつれて失われていくような気がしているのです。
 高校生レベルでは、数学コンクールによって、このような「心」や「力」をすこしばかり取り戻せたと考えているのですが、その一方で、コンクールの問題のレベルが、高校生を中心に高くなりすぎてしまったことにある種の抵抗も感じていました。
 そして、こんな問題に素晴らしい答えを書く中学生を見たり、また、ある先生から、「小学生に問題がちゃんと読めれば、もっと奇抜なアイデアが出るかもしれないし、本当の未来のためには、その辺から伸ばさなければいけないよ」と言われたりしました。同じ考え方に立脚して、少しは正解の多い、易しい文章で書いた小学生(高学年)、中学生向けの数学コンクール「ジュニア版」が必要であると思うようになりました。

私たちは、この数学コンクールジュニア版によって、数学が本来持っている「考える力・想像する力」の認識を、中学生・小学生(高学年)にまで広げていきたいと思います。そして、その上に、わが国の未来、ひいては、世界の未来を拓きたいと願っているものです。この趣旨にご賛同をいただき、是非ともご協力を賜りますようお願い申し上げます。