遺伝性皮膚病の原因をDNA解析で解明: 70年間の謎を解き明かし、皮膚病治療に光

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  • 2013/06/06

名古屋大学大学院医学系研究科の秋山真志教授と河野通浩講師を中心とする研究チームは、70年前に発見され、その後原因が明らかになっていなかった遺伝性の皮膚病、網状肢端色素沈着症(もうじょうしたんしきそちんちゃくしょう) (Reticulate Acropigmentation of Kitamura : RAK)の原因遺伝子を解明しました。この研究成果は2013年5月10日付の英国科学雑誌Human Molecular Geneticsのオンライン版に掲載されました。

RAKは、思春期までに手足から網目状のシミが皮膚にでき、うでやもも、首に次第に広がっていく病気です。1943年に日本人皮膚科医の北村包彦らにより初めて報告されましたが、その後70年間、原因は謎のままでした。

研究チームはRAKを発症した患者の1家系4人を対象に、ヒトの全遺伝子配列のうち、タンパク質をコードしている配列をすべて解読し、変異を網羅的にリストアップしました。そのなかで、病気が出ている人にはあるが、病気が出ていない人には出ていない遺伝子変異を探しました。この結果、ADAM10遺伝子の変異がRAK患者さんだけに認められました。ADAM10は細胞内で働くタンパク質を切断する酵素として知られていますが、遺伝子変異があるとADAM10は皮膚のなかでうまく働かなくなる、つまり、うまくタンパク質の切断ができなくなると考えられます。今回の研究によってADAM10の異常によって病気が起こることが分かったので、今後はどんなタンパク質がADAM10に切断されなくなるとこの病気が発症するのかを細胞やマウスの実験で解明し、治療法を開発することが期待されています。

河野通浩講師

河野通浩講師は、大学院生のころから色素異常症について研究されてきました。色素異常症には似たような症状がでる病気がいくつかあり、以前はそれらが同じ原因から起きるものと考えられていました。今回の成果によってその定説を覆すことができました。

今後の展望

今回原因として特定したADAM10遺伝子の異常により影響を受けるタンパク質を特定し、病気のメカニズムを解明すること、そして治療法を開発することを目標にしています。

これから研究をする人へ

皮膚の病気は目で見ることができます。そのため、皮膚病の原因遺伝子を見つけると、その遺伝子が皮膚に与える影響を見ることで、その遺伝子がヒトの体の中でどのような働きを持つかを明確に知ることができます。基礎医学、基礎科学の面でも皮膚の研究は大変興味深いものです。また、研究を通して皮膚病で悩んでいる患者さんに直に貢献できることにもやりがいを感じています。




参考

研究成果情報
河野通浩講師

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