屋久杉年輪の炭素14分析からわかった二度の宇宙線量の急増

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  • 2013/05/13

名古屋大学太陽地球環境研究所の増田公明准教授と三宅芙沙(ふさ)日本学術振興会特別研究員を中心とする研究グループは、西暦994年に大気中の放射性炭素(炭素14)が急激に増加し、その後数年間で減少したことを発見しました。昨年同グループにより発見された西暦775年の急増に続き、宇宙環境の変動とその地球環境への影響を解明する大きな一歩となりました。この研究成果は2013年4月23日付の英科学誌電子版Nature Communicationsに掲載されました。

炭素14は、地球外から飛来する銀河宇宙線が地球大気と反応して中性子を生成することによって作られ、通常は大気中にほぼ一定の割合でごく微量存在します。大気中の炭素は光合成によって樹木に取り込まれるため、古い樹木の年輪を分析することでその年代の宇宙線量を知ることができます。

2012年の研究で、同チームは西暦775年に通常の太陽活動による変動率より20倍も大きく、過去3,000年間で最大級の宇宙線量の急激な増加があったことを発見しました。しかしそれが巨大な太陽フレアによるものか、超新星爆発によるものか、また別の要因によるものかは特定されていませんでした。

今回西暦994年にも同様に炭素14の急増が確認されたことから、それを引き起こす何らかのイベントが比較的頻繁に起きていることが明らかになりました。またこの二つの時期は太陽活動が活発な時期と重なるため、炭素14の急増は大規模なフレアが原因であることが有力になりました。現代においてこのような太陽活動が発生した場合、社会に与える影響は計り知れません。今後、どのような時期に炭素14が増減したかを詳細に調べることで、将来の大規模フレア、また地球環境の変動の予測につなげることが期待されます。

増田公明准教授

宇宙から飛来する放射線―宇宙線がどのようにしてつくられ、地球へやってきてどのような影響を与えるのかを知りたくてこの研究を始めました。炭素14量のちょっとした変化に注目して、地道にその原因を追及してきたことが今回のような成果に繋がりました。

今後の展望を一言

過去を知らなければ未来は見えません。今回の宇宙線突発現象の研究が将来の予測に繋がることを期待しています。

これから研究をする人へ一言

宇宙が身近になってきています。広い宇宙の中で、私たちの地球や太陽がどのような存在なのか、考えてみませんか。

参考

研究成果情報
10世紀における宇宙線イベントの発見
8世紀における宇宙環境の大変動を発見

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