カブトムシのツノの秘密

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  • 2013/05/01

名古屋大学の新美輝幸助教を中心とする研究グループ(※1)は、世界で初めてカブトムシのツノが性差をつかさどる遺伝子によって制御されていることを解明しました。この成果は、2013年4月23日に欧州分子生物学機構の学術誌、EMBO Reportsのオンライン版に掲載されました。

カブトムシの立派なツノは雄のみが持つことは知られていますが、それがどのような遺伝子により形作られているかは解明されていませんでした。研究チームは性差を司る遺伝子doublesexdsx)に注目し、この遺伝子をカブトムシが持つことを発見しました。この遺伝子の働きを抑えたところ、成長の過程で雄のツノは短くなり、雌には本来生えることのない短いツノが現れました。また、遺伝子を抑制されたカブトムシは雄雌共に生殖機能を失いました。

今回の研究は、カブトムシの進化の過程において、まず未発達な状態の短いツノが性とは無関係に獲得され、つぎにdsx遺伝子がツノ形成に関わるようになり雌雄で異なるツノへと進化したという新しい視点を提示しました。研究チームは、これまでRNA干渉(RNAi、細胞の中で遺伝情報を伝達するRNAが二本鎖RNAの働きにより分解される現象)を利用した生物農薬や新奇害虫防除法を開発しており、今回の研究による不妊化技術はこれらの技術に応用されることが期待されます。

※1:伊藤佑太、針谷綾音、中田萌、伊藤彰紀、大出高広、柳沼利信、新美輝幸(名古屋大学大学院生命農学研究科資源昆学研究室)、細谷忠嗣、荒谷邦雄(九州大学大学院比較社会文化研究院環境変動部門生物多様性講座)、大場裕一(名古屋大学大学院生命農学研究科分子機能モデリング研究分野)

新美輝幸 助教

今後の展望

カブトムシのツノ形成遺伝子をさらに見つけ、ツノがどのように形成されるかを遺伝子レベルで明らかにしたい。

これから研究をする人へ

生物を観察することにより、様々な興味深い現象に出会うことができます。自分の目でじっくり観察して、不思議に満ちた生物の世界を堪能して下さい。

参考

研究成果情報
これまでの研究成果
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